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かつて「世界の工場」と呼ばれた中国だが、米中貿易摩擦や地政学リスクが顕在化するなか、その地位は他国との厳しい競争にさらされ、状況が大きく変わりつつある。ベトナムが代替国の筆頭とみられているが、インドの追い上げも無視できない。iPhone 14 Plusの生産抑制が伝えられるアップルだが、インドで最新機種の製造を開始する計画を明らかにしている。インド政府も170兆円以上を投じ、外国製造企業による投資を拡大する目論見だ。
アップル、iPhone14製造の一部をインドにシフト
アップルが最新モデルiPhone14の製造を一部インドで開始することを明らかにした。インドの製造インフラは問題が山積しており、撤退した外国企業は少なくないといわれているが、アップルのこの動きは他の外国企業のインド投資の呼び水となる可能性があり、海外メディアでも注目の動きとなっている。
これまでの報道によると、アップルは2017年にインドでのiPhone製造を開始したが、製造ラインナップは古いiPhoneモデルに限定されていた。先般、明らかになった情報によると、アップルの製造を請け負っているフォックスコンがインド・チェンナイ郊外の製造拠点でiPhone14の製造に着手するという。
インドで製造されたiPhone14はインド国内市場に加え、海外市場でも販売される見込みだ。
アップルがインドで最新モデルの製造を開始するにあたり、メディアやアナリストによるさまざまな分析が行われている。理由の1つとして指摘されているのが、インド国内市場の成長可能性だ。
CNBCが伝えたCounterpoint Researchの調査によると、2021年インドのスマホ市場におけるアップルのシェアは3.8%にとどまるものだった。日本におけるアップルのシェアは
47%以上ともいわれており、これとは対象的な数字となっている。
Counterpoint Researchによると、インド国内では韓国サムスンや中国シャオミなどの低価格スマホのシェアが高く、全体的にみるとアップルは苦戦を強いられているようにみえる。一方、4万5,000インドルピー(約7万9,700円)以上の高額機種セグメントでは、iPhone13の売れ行きがよく、アップルは販売台数トップとなっている。
一方で、直近でiPhone14の販売不振が伝えられている。Digitimesによると、アップルのサプライチェーンパートナーはiPhone14 Plusの生産を40%も削減するよう命じられたという。これを挽回するうえでもインドの存在は欠かせない。
JPモルガンのアナリストらによると、2022年中にiPhone14製造全体の5%がインドにシフトされる見込み。また2025年には、最新モデルを含むiPhone製造全体の25%がインドに移管される可能性もあるという。
「世界の工場」としてのインドの可能性
直近数年のマクロ経済の数字を見ると、インドでは製造業分野での海外投資が増加傾向にあり、アップル以外にもインド国内での製造拡大を狙う外国企業は少なくないことが分かる。
インド地元紙
The Hinduが2022年7月28日に伝えたインド政府統計によると、2021~2022年の海外直接投資(FDI)は、848億3000万ドルとこれまでの最高値を更新。このうち、製造業分野では213億ドルが投じられたという。製造業分野のFDIは、前年の120億ドルから76%の増加を記録した。
対インドFDIの国別投資割合は、シンガポールが27%でトップ、これに米国(18%)、モーリシャス(16%)、オランダ(7.8%)、スイス(7.3%)が続く。
製造業の中で特に海外投資が活発なのが、自動車、化学、製薬など。
India Brand Equity Foundationがまとめた2000~2021年12月までの製造業FDIの分野別データによると、トップは自動車でその額は318億ドルに上る。これに製薬(192億ドル)、化学(191億ドル)、食品加工(109億ドル)、電子装置(105億ドル)が続く。
アップルの投資は「Electronics」に分類されると思われるが、同分野は32億ドルにとどまる。アップルの動きが呼び水となり、Electronics分野の投資は今後伸びてくるかもしれない。
【次ページ】インドの製造業をとりまく課題
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