• 2023/03/06 掲載

アングル:ディフェンシブ銘柄、今後は相場逆風下で有効に機能しない可能性

ロイター

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[ニューヨーク 3日 ロイター] - 米国株式市場で、生活必需品や公益、ヘルスケアといった伝統的に安全な投資先とされる「ディフェンシブ銘柄」は、昨年の全体的な相場下落局面で底堅さを発揮したが、今後はその名にふさわしい働きができないかもしれない。

S&P総合500種は1月に急反発した後、再び苦戦を強いられている。投資家の間で、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが「より高く、より長く」なるとの懸念が再燃したためだ。

通常、こうした逆風下の相場で投資家は、しっかりした配当を支払い、難局を乗り越えられる事業内容を持つディフェンシブ銘柄に資金を投じがち。アメリプライズ・ファイナンシャルのチーフ市場ストラテジスト、アンソニー・サグリムビーン氏は「昨年はディフェンシブ銘柄に身を隠すだけの簡単な話で済み、その作戦がうまくいった」と語る。しかし今年は事態がより複雑化するだろうという。

年初からの数週間を見ると、ディフェンシブ銘柄に投資する根拠は薄弱化してきている。米経済の足腰が弱まる気配はなく、短期国債利回りや短期金利などが近年にないほどの高水準に達し、ディフェンシブ銘柄と競合する関係になっているというのが理由だ。

本来公益などのセクターは、安定的な収益と事業の安全性から、債券の代役としての機能を果たしてきた。

また一部のディフェンシブ銘柄はバリュエーションが高水準にあるという点からも、相場全体が下向きになった場合でも投資家の避難先にならない可能性が出てくる。

昨年はS&P総合500種が19.4%下げたのに対して、公益とヘルスケア、生活必需品の下落率はおよそ1―3.5%にとどまった。

一方、今年初めから2日終値までの期間は、公益が約8%、ヘルスケアが6%、生活必需品が3%の下落で、S&P総合500種全11セクター別で値下がりワースト3を構成している。S&P総合500種は年初来で3.7%の上昇。ただ1月が2019年以来の好調さだった後に、下押す展開に変わった。

投資家を昨年、ディフェンシブ銘柄に引き寄せたのは、FRBの急激な利上げが景気後退(リセッション)につながるとの懸念で、医薬品や食品など必需品は経済が悪化しても消費され続けると確信したからだ。

ところが1月の雇用統計が力強い伸びを示すなど、最近の米経済指標は軒並み堅調なので、投資家はリセッションが差し迫っているとの考えを再検討するようになっている。

ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は「株式市場に目を向けると、基本的にリセッションのリスクはないと読み取れる」と述べ、今年これまでのディフェンシブ銘柄は「痛みを伴う取引」と化していると付け加えた。

ディフェンシブ銘柄は配当の高さゆえにこの10年にわたり、市場混乱時において資金が逃げ込んできた面もあった。特に伝統的な確定利付き商品の利回りが低かったことが、そうした傾向に拍車をかけた。しかし過去1年で、物価高騰とFRBの利上げによって短期金利と米国債利回りがともに跳ね上がり、以前とは状況が一変している。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータに基づくと、公益と生活必需品、ヘルスケアの配当利回りは足元でそれぞれ3.4%、2.7%、1.8%だが、6カ月物米短期国債利回りは5.2%近い。

ネーションワイドの投資調査責任者マーク・ハケット氏は「これまでと違って今は債券市場でかなり魅力的な利回りを手に入れることができる」と指摘した。

さらにディフェンシブ銘柄の中でバリュエーションが割高化しているケースが見受けられる。リフィニティブのデータストリームによると、公益の予想利益に基づく株価収益率(PER)は17.7倍で、過去平均を20%近く上回る。生活必需品のPERは20倍と、過去平均より11%も高い。

ヘルスケアのPERは17倍と過去平均をやや下回る水準。それでもこのセクターは今年の業績見通しはさえない。リフィニティブのIBESで示されるS&P総合500種全企業は今年1.7%の増益が予想されるが、ヘルスケアに限ると8.3%の減益になるという。

今後債券市場が不安定化すれば、ディフェンシブ銘柄が持つ安全性の魅力が高まってもおかしくないし、リセッションを巡る不安が再燃してもディフェンシブ銘柄がアウトパフォームするチャンスが出てくるかもしれない。

サグリムビーン氏も、アメリプライズはヘルスケアと生活必需品をオーバーウエートにしていると明かした。ただ同社は株式全般をアンダーウエートとして、債券投資への志向を強めつつある。「伝統的なディフェンシブ銘柄よりも債券の方が、今はより適切に守りの態勢を提供してくれる」と語った。

(Lewis Krauskopf記者)

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