• 2023/03/09 掲載

アングル:鴻海の野望、受託生産でEV市場狙う 勝機はあるか

ロイター

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[台北/デトロイト 6 7日 ロイター] - 台湾の鴻海科技集団(フォックスコン)が、米アップルの「iPhone」受託生産に続いて、電気自動車(EV)で「二匹目のドジョウ」を狙おうとしている。だが、それには「EV版アップル」を早急に見つけることが先決だ。

大手自動車メーカーから配送業者、その他の企業に至るまで、各顧客企業に応じたEVを受託生産する市場は、競争が激化している。

電子機器の巨大受託企業である鴻海は、ほとんどの企業が赤字から脱していないEV産業に強固さをもたらすとはいえ、大型契約を勝ち取って「創造的破壊の波」を乗り切れることを証明する必要がある。

鴻海は15日の決算発表時に、EV製造事業についての最新状況を説明する予定だ。

同社はロイターへの書面で「2023年中に多くの協力事業の結果が、次々と顕在化するだろう」とした。

鴻海の提案は「わが社に御社の次のEVを作らせてください」というシンプルなものだ。

同社は半導体やバッテリーなどEV専用の供給網を構築中で、米オハイオ州ローズタウンにあるゼネラル・モーターズ(GM)の元工場を買収。EV事業の統括者として、日産自動車出身の関潤氏を起用した。

大和キャピタル・マーケッツのアナリスト、カイリー・フアン氏によると、鴻海はオハイオ州で製造することにより、米国の「インフレ抑制法」による優遇措置を受けられる。

ガソリン車の製造とEV生産能力の構築計画に並行して取り組む伝統的自動車メーカーに対し、鴻海のこの立ち位置はセールスポイントになるという。

フアン氏は、鴻海が模索する伝統的自動車メーカーとのEV契約について「今年中に獲得できなければ、来年はもっと困難になる」と指摘。鴻海が「この波」に乗り損ねれば、EV受託製造事業に切り替えかねない中国下位メーカーとのコスト競争を強いられるかもしれない、と語った。

カナダの自動車部品最大手、マグナ・インターナショナルは既に自動車の受託生産を始めており、中国の吉利汽車も関心を示している。中国の広西汽車集団は、佐川急便向けにEVの受託生産を始めた。

鴻海が顧客獲得の切り札としているのが、独自のEVプラットフォームである「モビリティー・イン・ハーモニー(MIH)」だ。同社はMIHを「EV版アンドロイド・システム」と呼び、技術を標準化することで、さまざまなEVモデルを迅速かつ安価に開発できるとして、提携企業を募っている。

鴻海のジェリー・シャオ最高製品責任者は、ロイターに対し「当社は一種のエコシステムを作りたい。だれでも例えば、ユナイテッド航空であっても『自動車を作りたい』と言えるようなシステムだ」と説明。「遅かれ早かれ、最上位の伝統的な(自動車メーカー)がこう言い出すかもしれない。『プロダクトマーケティング企業になりたい。どうしてこんなに多くの従業員を抱える必要があるんだ?』」と語った。

シャオ氏は、基本ソフト「アンドロイド」を搭載したグーグル初のスマートフォン製造にも取り組んだ人物。EVも、この時と同様の商業的な変曲点に来ていると考えている。

鴻海の野望は大きい。まず、2025年までにEVおよび部品の生産で世界EV市場の5%、330億ドル相当を狙い、長期的には世界のEVの約半分を生産するのが目標だ。

<強欲>

自動車関連の調査会社、オートフォーキャスト・ソリューションズのバイスプレジデント、サム・フィオラニ氏は「EV市場ではだれもが強欲だ」と言う。同社は、鴻海のEV生産が2025年に約6万5000台、26年に15万7000台に届くと予想した。

ゴールドマン・サックスの推計では、EVの受託生産市場は25年に80万台(360億ドル)、30年に320万台(1440億ドル)に達する見通しだ。

鴻海は現在、オハイオ工場で同社が筆頭株主となった米EV新興企業のローズタウン・モーターズ向けにピックアップトラックの小規模な生産を行っている。同業の新興企業、米フィスカー向けの生産計画も発表した。

鴻海の劉揚偉会長は先月、オハイオ工場と部品製造で大型投資を行ったメキシコを3月か4月に訪れる計画を説明。「(EVに)関連した調印がいくつか行われるはずだ」と述べた。

鴻海は既に米テスラ向けに部品を供給しており、他の自動車メーカーや部品メーカー向けにもカメラモジュールを生産している。

EV市場では今、テスラその他のメーカーが価格を引き下げて販売台数を競っている。鴻海が取得したオハイオ工場は、世界屈指の生産台数を誇る。

オハイオ工場の生産管理ディレクター、イアン・アプトン氏はロイターの取材に、鴻海はこの工場でEVを約30万台生産したいと説明。「25万台程度の顧客を見つけたい。そうすれば、残りの一部をニッチな種類の物で埋められる」と話した。

(Sarah Wu記者、 Ben Klayman記者)

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