- 2023/03/09 掲載
焦点:中国の新金融監督機関、交錯する改革への期待と懸念
国務院(内閣)が全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に7日提出した機構改革案によると、新たに国家金融監督管理総局(NFRA)が設立される。
証券市場を除く金融セクターを監督するこの機関について、アナリストは特に地方政府レベルで規制の重複を減らすのに役立つと指摘する。
ベンチャーキャピタルであるアクティブ・クリエーション・キャピタルの創業者、ダニエル・トゥ氏は「全ての金融活動を監督下に置くことで、金融機関監視と消費者保護を強化しようという意図がある。しかし、習近平国家主席の目標に沿う形で党・国家を再編するものとも解釈できる」と話す。
昨年10月に前例のない3期目続投を固めた習氏は先週、党と国家機関の野心的な改革を改めて呼びかけた。アナリストらはこれを統制強化に向けた取り組みの一環と見なしている。
国家金融監督管理総局は銀行・保険部門の監督機関に代わるもので、国務院直属機関となる。
また、関係筋によれば、党は20年ぶりに「中央金融工作委員会」の復活を計画。国家金融監督管理総局とどのように連携するのかは不明だ。
党直属の中央金融工作委は、13日の全人代終了後に発表される予定の党組織改革プランの一環として明らかにされる見込みだ。
ゴールドマン・サックスはリサーチノートの中で、この改革案と国家金融監督管理総局を含む主要な政府機関の新しいトップ人事によって、規制政策を巡るより多くの手掛かりが得られるはずだと指摘している。
<集中化>
国務院は機構改革について、「金融問題の集中管理を強化」することで「地方金融規制制度の改革を深める」ことを意図していると説明する。
中信証券のアナリストはリサーチノートで、この機構改革により、中国人民銀行(中央銀行)は金融政策とマクロプルーデンスな監督の実施に重点を置き、国家金融監督管理総局はミクロレベルの活動に重点を置くことになると指摘した。
米ロサンゼルスで95億ドルの資産を運用するベル・エアー・インベストメント・アドバイザーズのパートナー、ケビン・フィリップ氏は、今回の改革は規制の「集中化」に向けたステップだとし、債務管理の観点からは妥当との考えを示す。
しかし、投資家からは、規制権限の再編は政府の統制強化を意味し、特に民間部門の金融活動に対する干渉や取り締まりが強まるとの懸念の声が出ている。
ニューヨークを拠点とする新興国市場専門ヘッジファンド、NWIマネジメントのグローバルマクロ調査担当責任者、タラ・ハリハラン氏は「私の感覚では、これは投資家、特に外国人投資家にとって懸念となりそうだ」と語る。
包括的な金融監視は政策調整に大いに役立ち、中国が資産バブルを抑えながら成長と信用創造を支えるのにつながると指摘。「しかしながら、投資家はこのような規制権限の集中化について、『無秩序な資本の拡大』として不動産セクターやハイテクプラットフォームがすでに直面したような一段の取り締まりを招く恐れがあると懸念するかもしれない」と述べた。
(Xie Yu記者、Selena Li記者、Carolina Mandl記者)
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