- 2023/04/04 掲載
金融安定リスク、日銀も警戒を=FRB政策、米銀破綻の一因に―元IMF幹部
【ワシントン時事】国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、モーリス・オブストフェルド氏は、米欧信用不安の端緒となった米中堅銀行シリコンバレー銀行(SVB)の破綻について、大幅な金融緩和後に急速な利上げを進めた連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が一因だと語った。また、9日に就任する植田和男次期総裁の下で異例の緩和策修正が見込まれる日銀も、SVBの事例と似た金融安定リスクに警戒する必要があると訴えた。3日までに時事通信のインタビューに応じた。
オブストフェルド氏は、SVB破綻はずさんな経営や規制の緩さが背景としながらも、「部分的にはFRB自らが招いたようなものだ」と分析した。SVBはFRBの利上げがもたらした金利の上昇で、保有していた債券の価格が下落。含み損への懸念から急激な預金取り付け騒ぎに見舞われ、一気に破綻した。
オブストフェルド氏は「SVBのような金融条件の引き締まりによる『事故』は波及する可能性がある」としつつも、「(リーマン・ショック時の)2008年と比べられる規模ではない」と断言。「市場は落ち着き、FRBは必要な残りの仕事をできるだろう」と述べ、今後もインフレ抑制のため追加利上げを行い、その後来年にかけて金利を据え置くと予想した。
オブストフェルド氏はまた、日本の物価も上昇しており、日銀にとって「適切なプラス金利への移行が難題だ」と指摘。「日本経済は長らく日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)に支えられていた」とし、「金利が上昇すれば、幾分金融安定に課題が生じるだろう」と懸念した。
その上で、日本にもSVB破綻のような問題は「あり得る」と強調。植田氏は「銀行システムの脆弱(ぜいじゃく)性に細心の注意を払う」必要があると警告した。
◇モーリス・オブストフェルド氏略歴
モーリス・オブストフェルド氏
米カリフォルニア大バークレー校教授(経済学)。コロンビア大教授などを歴任後、オバマ政権下の2014~15年に大統領経済諮問委員会(CEA)委員。15~18年、国際通貨基金(IMF)チーフエコノミスト。02~14年、日銀金融研究所の海外顧問を務めた。1952年、ニューヨーク市生まれ。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに応じるモーリス・オブストフェルド元IMFチーフエコノミスト=3月29日、ワシントン
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