- 2023/04/25 掲載
ispace、民間初の月面着陸へ 26日未明に挑戦
今回は同社の月探査計画「HAKUTO―R」の初回ミッションで、着陸船に搭載した機器の技術検証や月面のデータ取得などが目的。着陸船は昨年12月、米民間企業スペースXのロケットで米フロリダ州から打ち上げられ、今年3月に月を周回する軌道に入った。現在は月まで約100キロ近辺の軌道上にあり、時速6000キロ(2時間で1周する速さ)で移動している。
着陸船は高さ約2.3メートル、幅約2.6メートル、重さ約340キロ。八角柱に近い形状をしており、4本の脚で月面に垂直着地する。約30キロまで搭載が可能で、今回は宇宙航空研究開発機構(JAXA)とタカラトミー、ソニーグループ、同志社大学が共同開発した超小型自走ロボットや日本特殊陶業の固体電池など7つの荷物を積んでいる。
月に着陸するには、重力に引っ張られながらも適切に速度を落とす高度な技術が必要になる。技術責任者の氏家亮氏は、「スキーのジャンプ台を自転車で降りていって、ブレーキをかけ始めて端でピタッと止まるようなイメージ」と減速する難しさを説明。着陸についても「地球で言えば、飛行機の上からボールを蹴って、(管制室のある)日本橋の区画に着陸するような感じだ」と話す。
水や鉱物などの資源が利用できる月の探査は今後、ビジネスとしての市場拡大が期待されており、国や民間で競争が激化している。ispaceの挑戦も月探査ビジネスの布石として注目を集めており、日本勢が参入する足掛かりにもなる。
アイスペースは今回のミッションで安定した通信と電力供給を確立し、搭載した機器の運用能力を実証する。24年に予定する2回目は月面探査車の走行性などを検証し、25年の3回目は米航空宇宙局(NASA)の有人月探査計画「アルテミス」にも貢献する計画。今回トラブルが起きた場合でも、2回目、3回目に知見を生かせると考えている。
2010年に創業したアイスペースは、月への物資輸送サービスを実現し、将来的に地球と月が一体化した経済圏の確立を目指している。今月12日には日本の宇宙ベンチャーとして初めて東証グロース市場に上場した。当日は買い気配で取引を終え、値がつかなかった。開発に伴う費用で今期・来期も最終赤字が続くが、市場関係者からは、目先の業績より本格的な宇宙ベンチャーとして「将来の夢を買っている」(国内証券アナリスト)との声が聞かれた。
(白木真紀、小宮貫太郎 編集:久保信博)
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