- 2023/07/09 掲載
TPP拡大、元交渉官に聞く(1)
英国の加入で環太平洋連携協定(TPP)は拡大局面に入る。TPP交渉で日本の事務方トップの首席交渉官を務めた鶴岡公二・国際情勢研究所所長(元駐英大使)と、農産物交渉に当たった大沢誠・農林中央金庫エグゼクティブ・アドバイザー(元農林水産審議官)に今後の展望を聞いた。
◇TPPは日本の「外交資産」=鶴岡公二・国際情勢研究所所長
―英国が加わる意義は。
TPPは、世界貿易の将来の原動力になり得るのはアジア太平洋(地域)であり、そこで自由度の高い水準の協定をつくり、世界に広げていくことが好ましいという考え方だ。どこの国でもTPPに加盟することでこの地域の経済活動に参画できることがはっきりした。
―英国の狙いは。
一つは、安全保障的な感覚だ。もう一つは、経済的な利益の追求で広い市場に参画していくためだ。自由市場の国だから改めて制度を大きく変えずとも、TPPの義務を果たすことができる。日本が英国の加盟をどう評価するかは、他の国の対応にも影響を与えている。TPPは日本の「外交資産」と認識していいのではないか。
―駐英大使として英国に加入を働き掛けた。
欧州連合(EU)からの離脱でせっかく通商交渉権限を手に入れるのであれば、もっとも有意義な経済連携を目指すべきだと説いた。TPPは英国にとっても好ましいし、TPP側は英国を歓迎するだろうと考えた。
―中国と台湾の加入申請をどう扱うべきか。
中国の今の制度はかなりTPPと乖離(かいり)がある。見通しの立てにくい作業になる。台湾は政治的な問題がなければ入りやすい。より入りやすいのは中南米3カ国(エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ)だろう。まず日本がどう考えて各国と連携していくか方針を示すべきだ。
―米国は経済安全保障に軸足を移している。TPP復帰の可能性は。
米国のTPP復帰は全くの夢物語だと認識し、しかし、高いレベルで米国に説き続けることは大事だ。米国がおかしな方向に行くのであれば、日本はより一層強く、自由貿易の重要性を訴えるべきだし、それを具体的に実現していくべきだ。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える鶴岡公二・国際情勢研究所所長=4日、東京都港区
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