- 2023/07/09 掲載
TPP拡大、元交渉官に聞く(2)
―英国がTPPに正式に加わる。
TPPは決して関税だけの協定ではない。交渉当時から高いレベルのルールとセットで考えていた。高いレベルのルールを共有する国々が経済的な統合を図って、それが一つの経済圏になっていくことが一番の意義だ。新規加盟によって(協定の自由化)レベルが下がってしまわないことが大事だ。英国は基本的にルールの例外扱いがないと理解している。(英国の加入交渉の経過は)良いプロセスだったのではないか。
―TPP発効後、国内農業への影響は。
高いレベルのルールとセットで貿易自由化の水準が設定された。その後の日米貿易協定や、欧州連合(EU)、英国との交渉でもTPPのレベルを超えないことが与党や国会の強い要求だった。交渉結果は自分で評価しないのが原則だが、多大な影響があったとは聞いていない。ただ、まだ関税削減は終わっていない。不断に状況を見て対策を考えていくべきだ。
―離脱した米国は軸足を経済安全保障に移した。
TPPは当初から、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値観に賛同する国々のルールだという認識があった。経済安全保障と矛盾、対立するものではない。日本の役割は、基本的な価値観を共有する人々のルールをしっかり発展させていくことだ。
―食料安全保障の重要性が増し、自由化の潮目は変わったのか。
食料安全保障のため、国内生産による供給力を高めていくことは、TPPの前も後も変わらぬ国家目標だ。農産物だけではなく、生産資材も含めて輸入に依存しているモノの自給率を高めていくことは必要なことだし、自由化と矛盾なく追求していくべきだ。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える大沢誠・農林中央金庫エグゼグティブ・アドバイザー=3日、東京都千代田区
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