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  • 2023/07/10 掲載

アングル:EVブームでタイが中国と接近、揺らぐ日本勢の牙城

ロイター

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[バンコク 10日 ロイター] - タイの自動車産業は、1962年にサイアム・モーターズが日産自動車と提携して生産に乗り出したのをきっかけに、販売網の構築から先駆的な開発まで、日本勢との何十年にもわたる関係を通じて収益を稼げる事業モデルを築き上げてきた。

そのサイアム・モーターズが今、日本以外の外国企業と手を組んで成長を模索しようとしている。

バイスプレジデントのセバスチャン・デュピュイ氏はインタビューで、特に高価格帯の電気自動車(EV)分野において中国の複数の自動車メーカーと提携に向けた協議を進めていると明かした。

デュピュイ氏は「EVは素晴らしい成長の源泉になるだろう。市場は拡大を続けており、われわれはその成長を取り込みたい」と語った。

サイアム・モーターズのこうした動きは、タイの自動車業界で急速に進む地殻変動の表れと言える。ずっと日本勢の牙城だったこの市場に、比亜迪(BYD)や長城汽車などの中国勢が2020年以降、14億4000万ドルもの投資を行い、新たな地歩を固めつつある。

日本メーカーはEVへの取り組みスピードが遅い。そのため中国で販売が落ち込んでいるが、アジアのもう1つの重要市場であるタイでも新規参入組の挑戦を受けざるを得なくなっている。新車登録データや業界幹部、アナリストの発言などから、このような事態が浮き彫りになってきた。

既に中国勢の動きにより、タイの自動車業界は変容し始めている。中国のEVメーカーが自分たちのサプライヤーを呼び込み、長年日本メーカーとのつながりが深かったサイアム・モーターズなどの現地企業は新たな提携先を探しているからだ。

タイは東南アジア最大の自動車生産・輸出国で、国内市場もインドネシアに次ぐ規模だが、これまで日本メーカーは数十年間ずっと突出して優越的な地位を保っていたので、ほとんど自国市場の延長として扱うほどになっていた。

だが昨年、タイに対する国別投資額は中国が日本を上回った。BYDが来年操業を始める新工場に投資したことや、タイ当局が中国のEVメーカー誘致に積極化したことが背景だ。

<EV登録台数で大差>

首都バンコクで暮らす55歳の教師は、10年半もトヨタ自動車の「カローラ」を運転していたが、今年になって長城汽車のEV「欧拉(ORA)グッドキャット」に乗り換えた。副業でライドシェアサービスにも従事しているこの男性は「内燃エンジン車に戻るつもりはない」と話す。

政府データによると、昨年タイで登録された新車85万台弱のうちEVはわずか1%程度だったものの、今年1-4月はその比率が6%強まで上昇している。

1―4月のEV登録台数は1万8481台で、BYDが7300台余りと圧倒的。トヨタは11台に過ぎない。

トヨタはタイにおいて支配的なブランドとなっており、昨年の自動車・トラック販売台数全体のシェアは、資本提携するいすゞ自動車、さらにホンダも足し合わせれば約70%に達する。

それでも野村総合研究所タイのプリンシパル、山本肇氏は、向こう10年で手頃な価格のEVが普及するのに伴い、中国ブランドは日本勢から最低でも15ポイントのシェアを奪う可能性があると予測する。

山本氏は「日本勢にできるのは高級セグメントの一角をターゲットにすることだけだ」と語る。

過去10年でグループ企業とともにタイに70億ドル近くを投資してきたトヨタはロイターに、タイでのEV生産を検討していることを明らかにした。

トヨタによると、タイで昨年販売を開始したEV「bZ4X」はこれまでに3356台を受注している。電動ピックアップトラックの投入も示唆しているが、ゴールドマン・サックスは先月のノートで、別のセグメントの拡大を考える必要性が強まっていると指摘した。

<政府の積極的取り組み>

タイは2030年までに年間生産250万台の約30%をEVに転換し、東南アジアの主要なEV生産拠点になることを目標に、積極的に投資を受け入れようとしている。

そのため中国のEVメーカーに対して、現地組み立てを条件として輸入関税軽減措置やEV生産向け税額控除なども提供する態勢にある。

タイ投資委員会(BOI)のナリット長官は「われわれがこの地域におけるEV生産拠点になりたいとしても、EV組み立て産業を構築するだけでは不可能だと分かっている。EVのエコシステム全体を強化することが必要になる」と述べた。ナリット氏はここ数カ月で何度も中国を訪れている。

BOIは5月末までに、EV関連で13社による14件の投資プロジェクトを承認。合計年間生産能力は27万6640台に上る。

長城汽車のタイ部門マネジングディレクター、ナロン・スリタラヨン氏は、タイには強固なインフラやサプライヤー、人材がそろっているので、東南アジアの生産拠点に選んだと説明した。

同氏は「特にEVのような新規事業の場合、購買力があって将来に向けた成長計画を後押ししてくれる市場に浸透していきたい」と話した。

(Devjyot Ghoshal記者、Pasit Kongkunakornkul記者)

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