- 2023/11/17 掲載
アングル:人民元が貿易金融シェア2位に、低金利で借り入れ急増 国際化まだ途上
[上海/シンガポール 17日 ロイター] - 世界の貿易金融で人民元のシェアがユーロを抜いて2位になった。世界的に金利が上昇する中、人民元の金利が低く、多国籍企業が人民元建て債券の発行や中国本土の銀行からの借り入れを増やしていることが背景だ。
メイバンクの為替担当シニアストラテジスト、フィオーナ・リム氏は、海外投資家は地政学リスクや低成長に対する懸念で中国から資金を引き揚げているが、「元安や中国の利下げで中国元の資金調達コストが大幅に低下している」と指摘。
BMWやクレディ・アグリコルといった海外企業や中国企業の海外子会社がパンダ債(外国企業などが中国本土市場で発行する人民元建て債券)の発行を通じて1─10月に調達した資金は過去最高の1255億元(173億3000万ドル)。前年同期比61%急増した。
ナショナル・バンク・オブ・カナダも先月、期間3年のパンダ債で10億元を調達。表面利率は3.2%で、カナダ国内の4.5%を下回った。
香港の点心債(オフショア人民元建て債券)発行も1─8月に前年同期比62%増の3430億元と過去最高を記録。香港の人民元建て融資も急増している。
中国人民銀行(中央銀行)は先月、「パンダ債は資金調達通貨としての人民元の役割拡大に着実に寄与している」と指摘。銀行に対し海外企業への融資を行い、人民元の国際化を進めるよう促した。
国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、世界の貿易金融に占める人民元のシェアは9月に5.8%と年初の3.91%から上昇。始めてユーロを抜いた。
ドルのシェア(84.2%)は大幅に下回っているものの、人民元の国際的な利用状況を示すスタンダード・チャータード銀行の指標や中国銀行のクロスボーダー人民元指数(CRI)などは今年、軒並み過去最高を記録している。
<ローカルな国際化>
ただ、アナリストは人民元建て債券の利用は限られており、人民元の国際化が広範に進んでいるとは言いがたいと指摘。
ドイツのフォルクスワーゲン・グループはロイターに対し、初のパンダ債発行で調達した15億ドルを中国国内の事業のみに利用すると表明。メルセデスベンツ・グループもパンダ債で調達した資金を中国の自動車リース事業に充てる計画だ。
キャピタル・エコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は「人民元を使ったクロスボーダー取引の半分以上は、依然として中国本土と香港の間で行われている。これは非常にローカルな国際化だ」と述べた。
貿易金融や貿易決済での人民元の利用は、中国の広域経済圏構想「一帯一路」に参加する途上国など、概ね友好国に限られている。
ウィリアムズ氏は「人民元の貿易決済への利用は急増しているが、それはロシア、アルゼンチン、パキスタン、ナイジェリアといった特定の二国間に限定されている」と指摘。地政学的に米国と連携する国々は「人民元に切り替える姿勢は見せておらず、貿易での人民元の利用は世界的には伸び悩むだろう」との見方を示した。
関連コンテンツ
PR
PR
PR