• 2025/05/08 掲載

黒田前日銀総裁との一問一答

時事通信社

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黒田東彦前日銀総裁のインタビューでの一問一答は次の通り。

―日本経済の現状は。

日本経済は完全に立ち直った。2013年以降の安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の下、デフレではなくなり、基本的に1%台前半の成長が安定的に続く状況になっている。完全失業率も2%台半ば。超完全雇用で人手不足だ。

―トランプ米政権の高関税政策の影響は。

米国経済はこの20年、おおむね2%台半ばの成長を続け、先進7カ国(G7)の中で最も絶好調だった。しかし、高関税政策でインフレが進み、消費も落ちる。25年全体でマイナス成長になるとの見通しもある。トランプ氏が何をするのか分からないので、米国の企業が設備投資を手控え、中長期的に米国の成長率を下げる可能性があると言われている。高関税は米国の利益にもならない。秋口から米インフレ率が4~5%に再び高まり、消費者の不満は高まるだろう。

―日本への影響は。

国際通貨基金(IMF)は4月公表の最新の世界経済見通しで、25年の日本の成長率を0.6%と1月時点から0.5ポイント引き下げた。最大の輸出相手国である米国の成長率が落ちることで日本に悪影響を及ぼす。一方、米国と中国が高水準の関税をかけ合う状況では、日本製品への代替需要が生まれ、輸出が増える部分もある。米関税が大打撃かというとそうではない。

トランプ氏は言ったことをすぐに変えるので、あまり片言隻句におびえても仕方ない。じっくり腰を据えて、対応した方がいい。

―市場では、ドル高是正のための「第2プラザ合意」の可能性が取り沙汰されている。

全くあり得ない。(高関税政策の影響で)米国は株と為替、債券が同時に売られる「トリプル安」に見舞われたため、今の時点でドル安にしようという話が出てくるはずはない。将来的に話が出るかもしれないが、実現可能性はない。(1985年の)プラザ合意では、日米英仏と西ドイツ(当時)の先進5カ国(G5)で合意した。新たな合意には、日米欧でやらないといけないが、ユーロ圏の20カ国がまとまって乗ってくる可能性はない。中国も絶対に入らない。為替レートだけで、貿易収支が決まるわけではない。人民元を相当切り上げても、米国の対中貿易赤字が激減することはない。

―米国の貿易赤字は持続不能だという見方については。

米国の貿易赤字が持続可能ではないのはその通り。ただ、不均衡是正はまず米国自身がやらなければならない。財政赤字を減らし、過剰な住宅投資を抑える必要がある。

―日銀の金融政策正常化の評価は。

適切だと思う。賃金も物価も上がらないという「ノルム(社会通念)」は壊れて、(デフレ脱却の条件である)長期インフレ期待の2%定着が近づいている。これ以上、金融緩和を続ける必要はないから、政策金利を(景気を熱しも冷ましもしない)中立金利まで引き上げていくのは、当たり前の話だ。

―先行きの政策運営はどうか。

日本経済自体は順調に回復しているが、米関税政策によって成長率や物価の先行きへの不確実性は非常に高まっている。半年に1回、0.25%ずつ利上げしていくペースを続けられなくなるかもしれない。毎回の金融政策決定会合で、経済・物価動向を見て判断していくほかない。

【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える黒田東彦前日銀総裁=4月28日、東京都港区

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