- 2025/07/17 掲載
アングル:世界の中銀、ユーロ圏新発国債の購入拡大 アジアの需要旺盛
[ロンドン 16日 ロイター] - 各国中央銀行は今年、シンジケート団引受方式を通じてユーロ圏諸国の国債の購入を増やしている。第2次トランプ米政権の発足以降、国際金融市場では米国以外の市場に投資を分散する動きが見られ、その恩恵を受けたいユーロ圏にとっては明るい兆しだ。
各国の国債管理局のデータを使ったバークレイズの分析によると、中銀や政府系ファンド(SWF)を含む公的機関は年初からこれまでに、シンジケート団方式で発行されたユーロ圏国債の20%を購入した。この比率は昨年1年間の16%から増えている。
中でもドイツ政府が3月、積極財政への歴史的転換を表明した翌日実施した30年物国債の発行では、公的機関が55%を購入。また5月の10年物スペイン国債発行では、公的機関の購入が27%を占めた。
トランプ氏が貿易や安全保障を巡って同盟国と対立し、米連邦準備理事会(FRB)を攻撃するなどの状況から安全資産としてのドルの地位に疑問が生じており、ドルは今年9%下落。これに対してユーロは12%上昇し、ユーロ圏の政策担当者はこの機に乗じてユーロの準備通貨としての地位を高めたい意向だ。
ユーロ圏各国によるシンジケート団方式の国債発行は昨年2000億ユーロ(2324億ドル)を超え、政府の重要な資金調達手段となっている。
<アジアから高い需要>
シンジケート団バンカーによると、今年はアジア機関からの需要が際立っている。クレディ・アグリコルCIBのソブリン債・国際機関債担当プライマリークレジット・グローバル責任者、バンジャマン・ムール氏は「特に一部のアジア顧客がユーロ圏国債の世界に戻りつつある。大きなアジア中銀は非常に自信を持ってユーロ圏国債に投資しており、以前よりも自信を深めている」と語った。
ムール氏によると、欧州の安定した政情、財政赤字の相対的小ささに加え、インフレ率が低く欧州中央銀行(ECB)が必要に応じて追加利下げが可能なことが誘因になっているという。
ただ銀行関係者らは、中銀の外貨準備運用担当者が今年の動向に対応して通貨配分を有意に動かしていると結論づけるのは時期尚早だと強調する。
前出とは別のシンジケート団バンカーは、中銀はここ数年、期間の長い国債をあまり購入していなかったため、保有するユーロ圏国債の満期までの期間を長期化しているだけかもしれないと指摘した。
バークレイズのユーロ金利ストラテジー責任者、ローハン・カーンナ氏は「実際に何が起こっているかを見極めるのは極めて難しい」とし、「中国や欧州のSWFとこの点について話をしたが、彼らは時期尚早だという見解だった」と話した。こうした投資家は米国外への投資を検討してはいるが、本格的に米国債市場に取って代わる市場は存在しないと認めているという。
最新ニュースのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR