- 2025/08/30 掲載
アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」の企業参入促す
[北京/香港 27日 ロイター] - 北京で暮らす年金生活者のワン・シューユンさんはここ数カ月で、体重を減らして血糖値を下げるために8000元(約1115ドル)の栄養講座の費用を奮発し、さらにアディダスの靴の購入で1200元を支払った。
78歳のワンさんは元公務員で年金は月1万元。中国の平均受給額を大きく上回る金額を受け取り、子どもはいない。ニュージーランド産の輸入牛乳を日常的に買う。ワンさんは「自分自身のために快適な生活をすることを重視している。一番大事な目標だと考えているからだ」と話した。
ワンさんは中国に約3億人いる高齢退職者の1人で、中国が現在強力に推進する「シルバー経済」の中心となっている。
中国政府は2021年の政策指針で「高齢者の新時代」を掲げ、「シルバー経済の力強い構築」を呼び掛けるが、今年はこうした動きが加速している。これまでに声明を少なくとも20件出し、企業に対して食品・医療・介護サービスの改善し、金融商品の種類を拡充し、新しいビジネスモデルに注力するよう求めている。
中国政府が急ぐ背景に2つの要因がある。中国は高齢化が急速に進んでおり、60歳以上の人口は35年までに4億人に達する見込みだ。この人口は米国とイタリアの人口を合わせた規模にほぼ匹敵する。
一方で全体的な消費の伸びは低迷し、若年層はデフレや雇用不安をもたらした貿易摩擦から不動産不況に至るまで経済的な困難に直面し、経済に対する信頼感を失っている。
エコノミストらによれば、中国はこの40年間で急成長した結果、現在の高齢世代は十分な水準の貯蓄があり、極めてつつましく暮らしたさらに年齢の高い世代よりも自由に消費できるようになっているという。
調査会社ユーロモニター・インターナショナルのデータによると、世帯主が60歳以上となる中国の家計部門の消費支出総額は15年から25年の間に129%増加したと見込まれており、人口全体の79%増を大きく上回る。ユーロモニターの上席マネージャー、ヤナ・ルード氏は「成熟した消費者層は数が増えているだけでなく、消費額を大幅に増やしている」と話した。
高齢者世帯は平均すると若者世帯よりも消費額が少ないが、集計すれば大きな存在感がある。高齢者世帯の支出の伸び方は顕著になる見通しで、ユーロモニターの予測によると、60歳以上の消費総額は25―40年の間に3倍超に拡大し、人口全体の136%増を大幅に上回ると見込まれる。60歳以上の消費は40年までに中国の消費支出全体の34%を占め、現在の24%から拡大すると推定されている。
<シルバーテック>
創業100年という老舗の宝飾品大手の老鳳祥(ラオ・フォン・シャン)は高齢の消費者に狙いを定めている中国企業の1つだ。6月に人工知能(AI)搭載の老眼鏡を発売し、「シルバーテクノロジーに参入した」と宣言した。この老眼鏡は薬品のラベルやレストランのメニューのような小さな文字で書かれた印刷物を読みやすくし、道に迷った時に手助けしたり、「感情のこもった対話」で話し相手になる音声機能が使える「高齢者に優しい体験」ができるという。
IT大手の小米科技(シャオミ)もスマートフォンやテレビに高齢者向けの機能を追加し、子どもが遠隔操作で年老いた親たちの証明やエアコンのような生活環境を容易に管理できる仕組みを提供している。
しかしながら、政府や企業の試みにもかかわらず、エコノミストらは高齢者の消費が最終的にそれほどたくさん消費しない傾向があると指摘する。
さらに、ワンさんのような元公務員は手厚い年金を受け取る一方で、都市部在住の高齢の退職者は平均的な年金が1月当たり3000元とはるかに少なく、農村部は200元程度にとどまる可能性もある。
ナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミストのアリシア・ガルシア・エレロ氏は高齢世代の消費が「デフレ圧力を相殺したり経済を全体的に押し上げたりするほど強力にならないだろう」と語った。
最新ニュースのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR