- 2025/10/06 掲載
関税影響で収益大きく下振れなら「賃上げ抑制」の声=日銀支店長会議
Takahiko Wada Takaya Yamaguchi
[東京 6日 ロイター] - 日銀が6日に開いた支店長会議では、先行きの賃金について、各国の通商政策の影響や海外経済の減速などで企業収益が大きく下振れた場合には「賃上げを抑制せざるを得ない」との声が出た。その一方で、人手不足感の強さや最低賃金引き上げ、最近の食料品を中心とする物価上昇を受けて、引き続き高めの賃上げが必要とする声も報告されたという。
日銀が同日午後、支店長会議で出された報告事項を公表した。米国の関税政策や海外経済の減速が日本企業の収益や賃金・価格設定行動に及ぼす影響は、利上げ判断にとって重要ポイントの1つ。
米関税の影響が直接及ぶ輸出・生産については、関税引き上げに伴う駆け込みとその反動減に加え、資本財受注についても下振れの動きが見られるとの報告があった。その一方で、AI(人工知能)関連の需要の堅調さを指摘する報告も多数あったという。
一部の地域のサプライヤーからは、関税影響で収益が下押しされている国内納入先で「取引価格の交渉スタンスが厳格化している」との声が聞かれたものの、現時点では、人件費の価格転嫁の流れを阻害するまでには至っていないとの報告が多かったという。
設備投資については、IT関連需要の拡大期待による能力増強投資に加え、省力化・デジタル化投資などで積極的な投資スタンスが維持されているとの報告が多かった。ただし、通商政策の影響を巡る不確実性の高さを背景に、投資の先送りや見直しを実施・検討する動きが見られるとの報告があった。
価格設定面では、仕入れコストや人件費、物流費の上昇を転嫁する動きが続いているとの報告が多かった。ただ、コメなどの食料品価格の上昇で消費者の節約志向がやや強まるもとで「値上げの抑制や低価格商品の品ぞろえ強化等の動きもみられる」との報告もあった。
日銀が同日発表した10月の地域経済報告(さくらリポート)によると、9地域中1地域が景気の総括判断を引き下げた。残る8地域は総括判断を据え置いた。
判断を引き下げたのは北海道で、節約志向の強まりに伴う個人消費の判断引き下げを反映した。北海道では「一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに持ち直している」としている。
個人消費について支店長会議では、日常消費では消費者の根強い節約志向でスーパー等で購入点数の減少が続いているとの報告があった。一方で、都市部の百貨店等からは、高額品を中心に免税売り上げに弱さが見られるものの、「最近の株価上昇もあって国内富裕層の需要は堅調さを維持している」との報告が多数あったという。
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