- 2025/10/16 掲載
トヨタと豊田織に適切な情報開示要請、少数株主保護も=運用会社団体
[東京 16日 ロイター] - トヨタグループによる株式公開買い付け(TOB)を通じた豊田自動織機の非公開化計画を巡り、国内外の資産運用会社からなる非営利会員団体が8月に豊田織機と計画を主導するトヨタ自動車の取締役会に送った書簡で、TOB価格の算定方法や少数株主の扱いに懸念を示し、適切な対応と同計画の再検討を求めていることが分かった。
書簡を送ったのは、アライアンス・バーンスタインやシュローダーなど世界18市場の102社を会員に持つアジア・コーポレート・ガバナンス協会(ACGA)。同協会が16日、書簡を公表した。会員企業の80%強がグローバルに活動する機関投資家で、その運用資産総額は40兆ドル(約6054兆円)を上回るという。
同協会の懸念の中心は、TOB価格の決定に至った価値評価プロセスについて開示が不十分である点だ。価値算定モデルや豊田織機が保有する不動産や債権の第三者による評価が開示されておらず、各部門の事業価値を積み上げて全体の価値を評価する分析も行われなかったとを問題視。少数株主が価格の妥当性を判断する材料が不足していることを問題視している。
同協会のアマール・ギル事務局長は、非公開化計画について両社と一連の協議を行っており、豊田織機の社外取締役が話し合いに応じ、比較的踏み込んで議論する機会を得た、とロイターに語った。
トヨタ自動車は、8月上旬にACGAの書簡を受け取って以降、複数回の対話を通じて株式価値評価の前提条件などについての考え方を「丁寧に説明している」とコメント。TOBに関する会社間の交渉はそれぞれの独立性を確保する形で行い、「少数株主の利益にも十分配慮している」とした。
ACGAは豊田織機の取締役会に対し、TOB価格の算定手法、税務上の仮定、第三者による株式価値評価の内容を「直ちに開示」するとともに、同社が保有する有価証券・不動産、事業価値などをどうTOB価格に反映したのか「定量・定性の両面を合わせて明確に説明」することを求めている。
トヨタの取締役会には、1)非公開化計画での一連の取引がトヨタの資本効率とROE(自己資本利益率)目標20%の達成にどう寄与するのか、2)新設する持ち株会社に、トヨタが普通株式ではなく優先株式による出資を決めた意思決定の経緯、3)豊田章男会長が非公開化に直接投資することについて、会長と会社、その他の株主との利益相反の可能性をどう認識し管理したか――の3点に関する説明を要請した。
6月に発表された豊田織機の非公開化計画は、トヨタグループ15社が株式を持つトヨタ不動産と豊田会長が出資する持ち株会社が実質的にTOBを行って完全子会社化を目指すもの。TOB後の臨時株主総会で株式併合を決議し、残る豊田織機の株式をスクイーズアウト(少数株主の締め出し)で非公開化する予定。当初は12月上旬をめどにTOB開始を目指していたが、各国の当局承認に時間を要しているため、26年2月以降になる見込みという。
同計画を巡っては、発表前に一部メディアで報じられたため、豊田織機の株価がTOBへの期待から高値圏で推移。この結果、TOB価格(1株1万6300円)は報道前の過去平均と比べると一定の上乗せ幅(プレミアム)があるものの、発表前日の終値からは11%ほど安く、当初より海外の少数株主から「安すぎる」との批判が上がり、トヨタグループが少数株主を排除しようとしているとの声が出ていた。
こうした声に対し、豊田織機やトヨタはこれまで、TOB価格には「本源的価値が相応に反映されており、合理的に評価可能で妥当な価格である」と反論している。
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