• 2025/12/23 掲載

キャッシュレス、風評に課題=首都直下、バックアップ体制は進展―金融界の地震対策

時事通信社

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政府が公表した首都直下地震の最新の被害想定に関する報告書では、経済中枢機能の中心を担う日銀や金融機関について、遠隔地へのバックアップ拠点設置などを通じ「全体としての業務継続の確保対策が比較的進展している」と評価した。一方、停電や通信障害でキャッシュレス決済が利用不能となる事態や、風評による金融市場を巡る不安拡大などへの対応が課題として指摘された。

日銀では、金融機関との資金や国債の取引を決済する「日銀金融ネットワークシステム(日銀ネット)」について、非常用発電設備や初動対応職員の確保に加え、システムのバックアップセンターを整備。大阪支店などで必要な業務を継続できる体制も取っている。

民間でも、多くの銀行が遠隔地にバックアップ拠点を設置。銀行間の資金決済を担う「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」も東京と大阪でシステムを常時同時稼働しており、有事に片方が停止しても「業務継続が可能」(半沢淳一全国銀行協会会長)だという。

日本取引所グループ(JPX)もシステムの東西での相互バックアップ体制は整備済み。東西いずれかで震度6弱以上の地震が発生した場合は自動的に対策本部を立ち上げる。毎年定期的に、災害を想定し経営陣が参加する訓練を実施しているという。

日本証券業協会では、証券会社などの会員各社を対象に、業務継続計画(BCP)の整備に関するガイドラインを作成。本店が被災した場合に備え、離れた地域に本店機能を持たせることなどを求めている。

一方、被害想定に関する報告書では、インターネットや海外中心に被災情報や金融市場に関する風評が流布し「市場の不安心理が増幅する恐れがある」と指摘した。仮に決済や売買システムが維持されても市場に大混乱を来す懸念は残り、適時的確な情報発信が求められる。

個人消費に占める決済額が4割超に拡大している、クレジットカードや電子マネー、コード決済などのキャッシュレス決済の普及も新たな課題を突き付けている。停電・通信障害で利用不能となれば、多くの市民が「買い物難民」化し、現金を求めてATMに殺到する事態も見込まれるため、政府は発災時の決済機能確保の検討や現金引き出し急増への備えを呼び掛けている。

【時事通信社】 〔写真説明〕日本銀行本店=10月30日、東京・日本橋本石町 〔写真説明〕東京証券取引所=10月6日、東京都中央区

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