- 2026/01/21 掲載
マクロスコープ:自民公約の食品減税、財源論先送り 費用対効果に疑問の声も
[東京 21日 ロイター] - 自民党は政権政党として臨む2月の衆院選の公約で、飲食料品について2年間に限り消費税の課税対象から外す方針を掲げ、実現に向けた検討を加速するとした。高市早苗首相(自民党総裁)の主張を反映した形だが、焦点となる財源や実施までの具体的なスケジュールなど、重要な枠組みは示されなかった。
物価高騰が続く中、低・中所得者層の家計支援という分かりやすさがある一方、議論は選挙後に開催されるとみられる超党派の「国民会議」に先送りしており、着地点は見通せない情勢だ。
財源について、高市首相は19日の会見で「補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などといった歳出・歳入全般の見直しが考えられる」と発言したものの、2年間という時限措置に関しては、政府内からは出口戦略の難しさを指摘する声が出ている。
ある政府関係者は「一度下げたら再度上げるには相当な政治的リソースが必要になる。戻せるとは思えない」と断じた。税率を下げた後に戻すとなれば、消費者の体感としては増税となるからだ。財政悪化の懸念がくすぶる中、減税がずるずると長期化するリスクは払しょくできない。
<「給付付き税額控除を」と専門家>
金融市場では「高市首相の大きな変節」(バークレイズ)と受け止められ円安・金利上昇という副作用が顕在化する中、食品を対象とした消費税が廃止された場合、どの程度の「費用対効果」があるのか、専門家は慎重な見方をしている。
高所得者に比べて食費の負担が相対的に大きい低・中所得者層にとっては、確かに食品消費税の軽減は恩恵が大きいとされる。
大和総研の試算によると、仮に高市首相の会見における説明通りの内容が実施された場合、1世帯あたり年8.8万円の負担を軽減し、個人消費の喚起効果は0.5兆円(GDP押し上げ効果は0.3兆円)程度が見込めるという。
もっとも、所得や世帯構成などを踏まえて負担軽減額を調整することができないため、結果的に生活を下支えする必要性の低い家計により多くの財政支出が充てられることになると指摘。巨額の財源が必要な割に経済効果は小さいとみられる、という。
大和総研は「時限措置として実施する場合でも延長せずに予定通り終了し、高市首相が訴えていた給付付き税額控除の導入に向けた制度設計を国民会議で積極的に進めるべきだ」としている。
<課題山積>
経済への影響は良い面ばかりではなく、産業別の影響や現場の実務負担など課題も抱える。
飲食料品の提供形態の違いによって影響が異なる点は、その一例だ。軽減税率の適用品目のみを対象とした場合、テイクアウトや宅配・デリバリーは8%からゼロ%となる一方、外食は引き下げの対象外となって10%の税率が残る。
調査会社の富士経済(東京都中央区)がまとめている提供形態別(イートイン・テイクアウト・デリバリー)の動向によると、市場規模は合計で23兆円規模(2025年見込み)で、構成比はイートインが55.9%、テイクアウトが40.9%、デリバリーが3.2%となっている。
25年を含む直近4年はイートインが過半を占める構図だが、コロナ禍の21年はテイクアウトが構成比を拡大し、イートインを上回った。外部環境によって需要構造が変化することが示されており、消費税の税率差が明確になれば、外食を控えて持ち帰りや宅配を選ぶ動きが強まる可能性がある。イートイン主体の企業は需要の一部が流出するリスクが意識される。
実務面では、販売現場でレジシステムの改修や価格表示の変更といった対応が必要となる。一般商品を含めると消費税率が複数混在することになり、煩雑さは増す。政府はこれまで、時間とコストがかかるとして、物価高対策には適さないと説明してきた。事業者に一定の準備期間が必要であることを踏まえると、物価高にあえぐ消費者が実際に減税の恩恵を受けるのは先になりそうだ。
政府は、物価高対策として補助金や現金給付を講じている。これらは低所得者層や子育て層に絞ることで政策効果を高めやすく、実施までの時間も比較的短い。
すでに野党から、物価高騰対策としては時間がかかりすぎるとの批判が出ている。
国民民主党の玉木雄一郎代表は21日、ロイターのインタビューで「早くて2年後の減税となり、当面困っている人への物価高騰対策としては効果がない。やるべきではない」と話した。
(杉山健太郎、取材協力:鬼原民幸 編集:橋本浩)
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