- 2026/02/19 掲載
アングル:キューバ観光業、米制裁による燃料不足で崩壊の危機
[バラデロ(キューバ) 18日 ロイター] - キューバのバラデロ半島にはエメラルドグリーンの海、真っ白な砂地、ヤシの木が並ぶまさに南国の楽園を絵に描いたような光景が広がっている。
しかし、キューバ政府が今月8日に航空燃料が底を突きつつあると発表すると、かつて砂浜で日光浴を楽しむ観光客でにぎわっていたこのリゾートのビーチから観光客が消え始めた。彼らがすぐに戻ってくることはないだろう。
トランプ米政権は共産主義の島国キューバを屈服させようと圧力をかけている。キューバを米国の国家安全保障に対する「異例かつ重大な脅威」と宣言し、ベネズエラからの石油流入を断ち切った上でキューバに燃料を供給する国への関税を引き上げると脅している。キューバの観光業は2024年に13億ドルの外貨を稼ぎ出し、輸出収入のうち約10%を担ってたが、こうした米国の圧力で最初に大きく崩れ落ちるドミノとなりそうだ。
ホテルと旅行会社、航空会社、現地の観光業の従業員を対象にしたロイターの調査では、ほぼ全てのセクターが燃料不足のために突然、まひ状態に陥っていることが分かった。
カナダから観光客を運ぶ主要な航空会社のエア・カナダ、ウエストジェット、エア・トランザットの3社はキューバ便の運航停止を発表した。カナダはキューバを訪れる観光客が国別で最も多い。
航空分析会社シリウムによると、カナダとキューバを結ぶ最大1709便が4月までにキャンセルされる見通しだ。北半球の冬季のピークシーズン中に数十万人単位で観光客が減少することになるだろう。
観光客数で3位のロシアの連邦航空局も先週、自国の観光客を数日以内に退避させるとともに、燃料不足が解消されるまで全便の運航を停止する方針を発表した。
スペインのホテル大手NHは13日、キューバ国内の全ホテルを閉鎖したと発表した。同じくメリアも国内30軒のうち3軒を閉鎖し、宿泊客を稼働率がより高く、より設備が整ったホテルに集約し始めている。
キューバが1990年代に国際的に観光業を解禁した直後からバラデロでガイドとして働き始めたアレハンドロ・モレホンさん(53)は「完全な不透明感に包まれている」とし、「全てが崩壊し始めている」と打ち明けた。
米南部ジョージア州にあるオーガスタ大学でキューバ経済を研究する経済学者のパオロ・スパドーニ氏は、観光業がキューバ人医師の派遣、海外送金とともにキューバが切実に必要とする外貨の主要な源泉だと語った。
これら全てがトランプ政権による厳しい制裁にさらされており、キューバの観光業セクターは新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)から十分に回復できずにいた。
「観光業セクターが完全に崩壊すれば、キューバ経済は持続不可能な状況に追い込まれて存続が脅かされるだろう」とスパドーニ氏は述べた。
2025年にキューバを訪れた観光客は180万人と前年の220万人から減少し、20年超ぶりの低水準となった。
バラデロは1959年のキューバ革命前に米富豪デュポン家のお気に入りの避寒地だったビーチリゾートだが、現在は欧州人やカナダ人にとって北半球の冬季に人気の休暇先となっている。
バラデロは表面上まだ平穏を保っているように見える。土産物店やほとんどのレストランは先週末まで営業していた。ビーチチェアーやビーチパラソルが砂浜のあちこちで見かけられ、日焼けした観光客が貝殻を拾う姿も見られた。
しかし、ロイターは少なくとも2軒のホテルが閉鎖されたことを確認した。
2010年代初めに建設され広大な港を見渡す複数のタワーからなる巨大な複合施設のドミナ・マリーナ・リゾートの警備員は記者がホテルに立ち入るのを拒否し、既に閉鎖されたと告げた。ホテルの電話番号は使われていない状態だった。
米国の燃料封鎖が3週目に入り、ホテルやレストランの営業を続けるのはますます難しくなるだろうと地元の従業員たちは語った。
1950年代製のピンク色のオープンカーで観光客を案内するホルヘ・フェルナンデスさん(53)は先週、あと1日分しか燃料が残っていないと話した。
フェルナンデス氏は「トランプ氏と(キューバ大統領の)ディアスカネル氏は何らかの合意をする必要がある。唯一この国で苦しんでいるのは国民なのだから」と訴えた上で、「キューバは閉鎖に追い込まれつつある」とこぼした。
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