• 2026/03/10 掲載

アングル:1970年代の再来か、中東紛争でスタグフレーション懸念

ロイター

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Alun John Yoruk Bahceli Sophie Kiderlin

[ロンドン 9日 ロイター] - 米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発した今般の中東紛争はスタグフレーションを引き起こすのか──。投資家が目下、思案をめぐらせているのは、50年前、世界のエネルギー供給の混乱が物価を押し上げ成長を圧迫した状況が再来するかだ。

「1970年代のシナリオが再現するリスクが高まっている」とRBCブルーベイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、カスパー・ヘンゼ氏は指摘する。「戦争が長期化し、原油価格がさらに大幅に上昇すれば、国債の安全資産としての地位が脅かされ、ひいてはあらゆる資産がリスクにさらされる」と述べた。

スタグフレーションがどのようにリスクとなり、市場にどう波及し得るか、5つのチャートで示す。

<原油が鍵>

スタグフレーション懸念の震源は原油価格の急騰だ。この高値がいつまで続くかが世界市場の最大の懸念事項だ。

北海ブレント先物は9日、2020年のコロナ禍以来最大を上昇率で1バレル=100ドルを突破した。

年初からの上昇率は70%に達し、欧州の天然ガス卸売価格は3年超ぶりの高水準にある。

これはインフレを押し上げる要因だ。キャピタル・エコノミクスは「目安として、原油価格が5%上昇するとインフレ率は先進国で約0.1ポイント押し上げられる」と指摘した。

経済成長を鈍化させる可能性もある。

国際通貨基金(IMF)の試算によると、原油価格が持続的に10%上昇するごとに、世界のGDPは0.1─0.2%縮小する。

過去にも原油価格の急騰は1973年、80年、90年、2008年の米国の景気後退の一因となった。

<中央銀行のジレンマ>

こうした状況は中央銀行を板挟みにしている。インフレ抑制のために利上げすれば経済成長を一段と損なう恐れがあるためだ。

米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は6日、「これ以上ないほど居心地の悪いスタグフレーション環境」が迫りつつある可能性があると米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語った。

市場は現在、欧州中央銀行(ECB)が26年中に少なくとも1回利上げするとみている。紛争勃発前は40%の確率で利下げを織り込んでいた。

イングランド銀行(英中央銀行)についても年内の利上げが意識されている。紛争勃発前の予想は少なくとも2回の利下げだった。

コメルツ銀行の金利ストラテジスト、ライナー・グンターマン氏は「ECB内のハト派が景気下振れリスクを強調しても、原油価格が下落に転じない限り利上げ懸念は払拭されない」とみる。

<物価連動債に脚光>

こうした動きは世界の債券市場を直撃し、投資家はインフレが将来のリターンを目減りさせる固定利付資産から撤退しつつある。

最も顕著なのは短期債だ。英2年債利回りはこの1週間で約50ベーシスポイント(bp)急上昇し、22年の「トラス・ショック」以来の大規模な売りに見舞われた。

2年債利回りはドイツとオーストラリアも同期間に30bp超上昇した。米2年債は比較的穏やかな13bpの上昇にとどまった。

こうした中、投資家の関心は物価連動債に向かっている。

英国の5年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI、物価連動債と名目債の利回り差)は2月末以降28bp上昇した。9日は約3.5%と昨年4月以来の高水準を付けた。

米国の5年物物価連動国債(TIPS)利回りは過去1週間で4.2bp上昇したのに対し、名目利回りは15bp上昇した。

<注目は米国>

市場や経済への打撃がトランプ米大統領の方針転換につながるかどうかを見極めようとする向きもいるが、戦争によるスタグフレーションの影響が米国のほうが欧州やアジアに比べて小さい可能性が高い点を念頭に置く必要がある。

「米国は南北米大陸とともに、ホルムズ海峡を通じて直接・間接的に供給が絞られている多くのコモディティーの自給が可能だ」。ラボバンクのシニアグローバルストラテジスト、マイケル・エブリー氏は、原油のほか、半導体製造に重要なヘリウムや、肥料を挙げて指摘した。

実際、米国市場は相対的に底堅い。先週、欧州株は5.5%下落、MSCIアジア太平洋(日本除く)指数は6.3%下落したが、S&P500種指数は2%の下落にとどまった。

米国債も先週、ドイツ国債をアウトパフォームした。

とはいっても、米国がスタグフレーションと無縁というわけではない。2月の雇用は予想外の減少となるなど、エネルギー価格急騰前からやや脆弱な兆候を見せていた。

<逃げ場はどこに>

投資家がスタグフレーションを嫌うのは、株式、物価連動型でない債券、金利がつかない金にまで打撃を及ぼし得るためだ。

金は先週2%下落し、9日も下落した。アナリストによると、他の資産の損失を補填するための売りもあったという。

紛争勃発以降、真に安全資産としての地位を維持しているのはドルだけで、ほぼ全ての先進国通貨に対して上昇している。

ソシエテ・ジェネラルの外為戦略責任者、キット・ジュークス氏は「米国は主要な産油国であり、原油ショックに耐えることができる──ただし政治的な余波は避けられないだろう」と述べ、欧州、とりわけ英国にこれは当てはまらないとした。

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