• 2020/09/14 掲載

アングル:コロナ禍のハロウィーン、製菓企業は広告戦略に苦慮

ロイター

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Richa Naidu

[シカゴ 8日 ロイター] - 米ケンタッキー州南部に住むマーサ・ジョーンズさんは、新型コロナウイルスを心配し、今年のハロウィーンでは3人の子どもに「トリック・オア・トリート」をやらせないことに決めた。代わりに彼女は、自宅のテラスを改造して小さなお化け屋敷を作り、ゲームを用意し、裏庭ではバーベキューとたき火を楽しむことにした。

「トリック・オア・トリート」とは、子どもたちがこの言葉を叫びながら、家々を回ってお菓子をねだるというハロウィーンの習慣だ。

ショコラティエである31歳のジョーンズさんは、「家々を回ってお菓子をねだらなくても、子どもたちにとっては、これが胸躍る体験になるだろう」と新しいハロウィーンの趣向に期待する。

数百マイル離れたニューヨーク市ブルックリン区では、43歳のミュージシャン、ポール・リーさんが今、2人の子どもが安全に「トリック・オア・トリート」に行けるようにするにはどうすればいいのか、思案に暮れている最中だ。

<顧客のニーズに合わせたカスタム広告>

10月31日のハロウィーンに向けた数週間、ジョーンズさんとリーさんは、製菓大手のハーシーが提供する新しいタイプの広告をソーシャルメディアやウェブサイト上で目にするようになるだろう。その広告は、顧客が住んでいる場所、そこでロックダウン(都市封鎖)が実施されている可能性、さらには顧客がハロウィーン関連でどのような活動を検索するかによって、PRする内容が大きく異なってくる。

ハーシーの幹部がロイターに語ったところでは、これはアルファベット傘下のグーグルとの提携による新たなマーケティング戦略の一環なのだ。

ハーシーは、グーグルが提供する検索データを用いて、家庭向けのデジタル広告を利用者のニーズに応じてカスタマイズする予定だ。今年のハロウィーンには例年とは異なる新たな困難がある。それを克服しようという試みだ。

ペンシルバニア州に本社を置くハーシーは、先月、利用者がハロウィーンで外出する可能性がどれほどあるか、検索内容に基づいて判断するデータの提供を受ける契約をグーグルと締結した。たとえば、近所の店の営業時間を調べたり、休暇を過ごすアイデアを検索する人は、外出する可能性が高いと見られる。

それが広告にはどう反映されるのか。ジョーンズさんのように休暇中も家に留まる人であれば、裏庭やリビングルームで、ゆらめく光のなかでキットカットやリーシーズ・ピーナッツバターカップを食べる人々の動画クリップをソーシャルメディアの広告で目にするだろう。

思い切って外に出ようという人が多い地域では、マスクをした子どもや大人たちが家々を回ってお菓子をねだる広告を見るかもしれない。

ハーシーの最高販売責任者フィル・スタンリー氏は、8月に行われたインタビューで「地理的にどういう状況になるかに基づいて、消費者に訴求する手法を毎週変えることができる」と語っている。

この動きは、残念な結果に終ったイースター商戦を踏まえ、米国の製菓企業がハロウィーンに向けてマーケティングやロジスティクス面で進めている多くの戦略変更の1つだ。

<実店舗よりネット販売に期待>

ハロウィーンは例年、製菓産業にとって売上高ベースでは最大のかき入れ時であり、クリスマス、イースター、バレンタインデーを中心とした時期を上回っている。ハーシーにとっても、年間約80億ドル(約9116億円)の売上高の1割を稼ぐのがハロウィーンの時期だ。

今年はオンライン販売の急増と「トリック・オア・トリート」参加の減少を予想して、ハーシー、モンデリーズ・インターナショナル、その他競合する製菓企業は、菓子の包装を縮小し、デジタルマーケティングへの支出を増やし、店舗のハロウィーン装飾を早めに開始し、実店舗の売上高減少を相殺しようとする小売企業向けに、ネットショップ用に確保しておく在庫を積み増しした。

ハーシーでは、ハロウィーン関連の売上高の約半分は「トリック・オア・トリート」頼みだという。同社はロイターの取材に対し、今年は昨年に比べ、主としてオンラインでの購入者をターゲットとして、ハロウィーン関連のデジタルメディア支出を160%増加する計画だと話した。また、グミキャンディ「サワー・パッチ・キッズ」を製造するモンデリーズでも、今年のハロウィーンではソーシャルメディア、デジタルメディアへの投資を増やす計画だと話している。

<在宅派、外出派とも満足させる>

マーケティング分析会社オプティマイン・ソフトウエアのマット・ボーダ最高経営責任者(CEO)によれば、今年、米国の親たちのなかで子どもを「トリック・オア・トリート」に送り出すつもりでいるのは約3分の1にすぎないという。「製菓企業に取っては大きなジレンマだ。予想される売上高減少をどうやって克服するのか」

製菓産業のマーケティング戦略において重要な柱となるのは、もはや外を出歩くことはハロウィーンに不可欠な要素ではない、と人々を説得することだ。

本番までの3ヶ月間、製菓企業が訴え続けているのは、消費者は「自宅で過ごすハロウィーン」のためにお菓子を買うべきだ、というメッセージである。ウォルマートやターゲットといった小売企業も、早ければ8月には店舗のハロウィーン装飾を開始し、こうした考え方を補強している。こうした動きにより、ハーシーの季節商品の売上高は、これまでのところ24.8%増加している。

ポイントは、家で過ごすハロウィーンに向けた製品購入を、それにふさわしい相手に向けて訴える一方で、子どもとともに近所を回る行事を続けようとする人々にも疎外感を与えないことだ。

「ZIPコードに応じて広告を調整する能力はある」とハーシーの広報担当者アリソン・クラインフェルター氏は言う。ZIPコードとは、米国郵政公社が地域を特定するために用いる郵便番号だ。「我が社のチームは、都市や大きな州のなかで、どのように違いがあるかを把握できる」

ハーシーが毎週分析しているグーグルのデータは、どの人々が外出する可能性が高いか、地方自治体がその地域における移動をどの程度制限しているかを示してくれる。ハーシーによれば、これは完全に匿名のデータであり、名前を特定しないユーザーのデータポイントを示すだけだ。購入者アンケートや小売企業、自治体を対象とする調査と合わせて用いられているという。

ウェルズファーゴのアナリスト、ジョン・バウムガートナー氏は「ハーシーがハロウィーン期間以前にどれくらい売り上げを増やすことができるか、それが十分であるか否かは予想不可能だ」と言う。「だがこれによってハロウィーン商戦が大失敗に終わるのを防げるかという点では、可能性はある」

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