- 2020/09/25 掲載
焦点:米株押し上げの「コロナワクチン期待」、楽観論は正念場へ
UBSによると、米株式市場における5月以来の上昇分の約40%が、新型コロナワクチン開発への期待による部分だった。
世界中で進むワクチン開発の取り組みはヤマ場を迎えつつあり、ファイザー
グリーンウッド・キャピタルの最高投資責任者(CIO)、ウォルター・トッド氏は「ワクチンは効果を持つという前提に立っている。だから、これに反する材料はどんなものでも、市場にとってリスクになるだろう」と述べた。
ワクチンはいくつも開発作業が進められているため、どこか1つの開発が頓挫しても市場への打撃は小さくて済みそうだ。世界保健機関(WHO)によると、現在臨床試験が行われているワクチンは世界全体では30件余りで、このうち6件程度が最終試験の段階にある。
BNYメロン・インベストメント・マネジメントの市場戦略部門のディレクター、リズ・ヤング氏は「壁にたくさんのスパゲッティを投げ付けて、1本でも引っかかればいいという感じで成功を目指している」と話した。
アストラゼネカ
ワクチンの普及時期については、以前より悲観的な予想も出ている。公開情報に基づいてワクチンの普及時期を予想しているグッド・ジャッジメントによると、来年3月末までに米国でワクチンが幅広く供給される確率は足元で54%となっており、7月初旬の20%弱から上がったが、9月初旬の70%強からは下がった。
ファイザーとモデルナはデータの初期的な分析に基づき、10月か11月に臨床試験の当初結果を公表する可能性があり、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)
当局が年内にワクチンを緊急承認すれば、旅行やレジャーなどロックダウンで影響を受けた銘柄が上昇し、何年も相場をけん引してきたハイテクなど成長株から、バリュー株への資金シフトが勢い付くだろう。
ただ、ワクチンが承認されても、どの程度のペースで普及するのかという問題は残る。米国ではトランプ大統領と疾病対策センター(CDC)トップとの間で、ワクチン普及の時期を巡って見解が食い違っている。
ナショナル・セキュリティーズの首席市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は「ワクチンの製造と供給に時間が掛かることが分かれば、市場に失望が広がるだろう」と述べた。
UBSの米・グローバル株式戦略ヘッドのキース・パーカー氏によると、ワクチンが承認されて普及した場合、S&P総合500種<.SPX>は足元の水準から300ポイント程度、8%余り上昇する可能性がある。
また、バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチによると、ワクチンが来年第1・四半期に普及した場合、世界の来年の国内総生産(GDP)成長率は6.3%となるが、普及が来年第3・四半期にずれ込んだ場合には成長率が5.6%にとどまる見通しだ。
パーカー氏によると、臨床試験が失望的な結果ならS&P500は100ポイント、3%程度下げる可能性がある。米株式市場はワクチン開発が1つ頓挫しても「何とか切り抜けられる」が、「失敗が2、3個続けば、ワクチン開発競争の再考が起きそうだ」と話した。
(Lewis Krauskopf記者)
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