- 2021/01/29 掲載
給与デジタル払いで綱引き=労働者、銀行界に懸念強く
給与がスマートフォンの決済アプリに直接入金される「デジタル払い」の解禁を目指す政府方針をめぐって労働組合の総本山、連合が反発を強めている。実現すれば、時代の変遷とともに現金入りの給与袋から銀行口座に振り込まれるようになった支払い方法がさらに大きく変化を遂げる。しかし、利用者保護などに対する懸念が根強い上、顧客基盤の侵食につながりかねない銀行業界との綱引きは続きそうだ。
金融とITを融合したベンチャー企業などで構成するフィンテック協会(東京)は、給与のデジタル払いについて、新型コロナウイルス禍で顕在化した多様な働き方、生活様式の中で「給与支払いも多様な方法が求められる」と指摘。副業・兼業も増える中、月単位でなく少額の給与を迅速に受け取る利点や需要はあると主張している。
これに対し、連合は28日に記者会見し「銀行振り込みと同等の安全性が確保されているのか懸念を抱かざるを得ない」と表明。スマホアプリを使った決済や送金サービスを手掛ける「資金移動業者」が経営破綻した場合の顧客保護などの仕組みが不十分だと訴えた。
政府は今後、保護策の在り方や整備に向け検討を急ぐ方針だが、仮に制度化されても、数十万円単位の給与を決済アプリで受け取る需要があるのか疑問符も付く。当面は仕送りなど需要が多い外国人労働者、少額のアルバイト収入、給与の部分的な振り込みといった利用にとどまる可能性もある。
それでも銀行業界は「給与は個人取引の起点」(大手銀行)と警戒を強める。銀行は振込先指定を踏まえ、住宅ローンや投資信託など多様な商品を提供しているからだ。地方銀行にとっても融資の元手となる虎の子を手放すわけにはいかず、将来的に地域金融を揺るがすリスクとして無視できない課題となる。
【時事通信社】
最新ニュースのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR