• 2021/02/26 掲載

富士通研究所、脳腫瘍などの放射線治療計画を短時間で生成する技術を開発

富士通研究所

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株式会社富士通研究所(以下、富士通研究所)は、University of Toronto(以下、トロント大学)と共同で、量子コンピューティング技術を応用して組合せ最適化問題を高速に解く技術「デジタルアニーラ」を用いて、ガンマナイフの放射線治療計画を短時間で生成する技術を開発しました。

ガンマナイフを用いた治療は、脳腫瘍などの脳障害や大脳の動静脈奇形を治療するもので、患部に対し、頭部の様々な方向から少量のガンマ線を照射することで、高い効果を上げることができます。今回開発した技術は、どこからどのくらいの線量を照射するかという膨大な組合せパターンを「デジタルアニーラ」で計算することで、従来、医師が経験に基づいて手動で数時間かかっていた治療計画の生成が、同等の精度を保ちつつ、数分で完了することを可能にしました。

これにより、医師が治療計画に当たる時間を短縮でき、結果的に患者の治療時間も大幅に短縮することができます。

今後、富士通研究所とトロント大学は、さらに多くの患者のデータに基づいて本技術の有効性を検証していくとともに、社会に貢献できる技術開発を進めていきます。

■開発の背景

ガンマナイフ治療はその非侵襲性(開口手術の必要がないこと)、および精度の高さから、脳腫瘍などの治療に使用されています。192本のガンマ線の光源を様々な方向から照射することで、患部には指定の線量を、また周辺の健康な臓器への照射量は抑えることができます。患部に対して最適な照射になるよう、照射の位置、形状、強度といったパラメーターを最適化する必要がありますが、その組合せパターンは膨大なため、現在の医療現場では、医師が経験に基づいて手動でパラメーター調整を繰り返しながら、治療計画を生成しています。要求を満たす計画生成には1.5時間から3時間程度の時間がかかっており、医師の負荷は大きくなっています。

また、医師が治療計画を生成している間、患者は頭部に定位のための金属フレームを固定され身動きが制限されたまま待機するケースがあり、身体的、精神的にも大きな負荷となっています。さらに、金属フレームを固定された状態の患者を見守るための医療従事者の確保も必要となっています。

近年、この計画生成を自動化するソフトウェアも出ていますが、現場では生成結果を医師が手動で修正しながら作成する場合も多く見られます。

富士通研究所とトロント大学は、2017年より量子コンピューティングを中核とする分野で戦略的パートナーシップを締結しており、今回、「デジタルアニーラ」の医療現場における応用技術として、ガンマナイフの治療計画生成技術を共同開発しました。トロント大学とその医療機関は、ガンマナイフのパラメーター調整を「デジタルアニーラ」で解くのに適した組合せ最適化問題に変換する方式検討を行い、富士通研究所は「デジタルアニーラ」の最適化計算アルゴリズムの開発などを行いました。

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