- 2021/04/08 掲載
アングル:バイデン政権の法人増税案、税率25%で企業と妥協か
バイデン氏は7日、記者団から28%を下回る税率でも合意するつもりかと問われ、「進んで耳を傾ける。条件を付けずに臨む」と述べ、妥協に前向きな姿勢を示した。
ロイターが企業関係者やインフラ投資計画に関わっているホワイトハウス当局者など数十人余りに取材したところ、大半はバイデン政権と業界団体が、自らの主張とは隔たりがあるとしても、双方にとって受け入れ可能な25%の税率で折り合うと予想した。
米大手エネルギー企業のロビイストは匿名を条件に「賛成ではないが、25%を見込んでいる。この水準ならわれわれの勝利とみなす」と話した。
トランプ前大統領と共和党は2017年に減税を導入し、法人税率は35%から21%に引き下げられた。しかし米大手企業の多くは実際の納税額がはるかに少ない。アルファベット傘下のグーグル、フェイスブック、メルクなど米国の多国籍企業は税負担の圧縮にたけている、と税や法律の専門家は指摘する。
バイデン氏は米経済の構造を改めて格差を是正し、中国の台頭に対抗しようとしており、その計画にとって4兆ドルの連邦予算における法人税収入の引き上げは重要な要素となる。
アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾフ最高経営責任者(CEO)は6日、インフラの抜本的な見直しの一環として法人税率引き上げを支持すると述べた。バイデン氏は先に、中流家庭に課される税率が20%を超えているのに対して、フォーチュン500社企業のうち91社は連邦法人税をまったく納めておらず、アマゾンはその1つだと述べていた。
バイデン氏のインフラ投資計画には、橋や道路、手頃な価格の住宅、高齢者介護職員などが対象に含まれている。
イエレン財務長官は7日、バイデン政権として法人税率の引き上げに加えて、会計上の利益に課税する「ミニマム税」、多国籍企業の海外収益に対する課税、税制の強化なども検討していると述べた。
<反対派からの支持欠かせず>
米商業会議所や民主党のジョー・マンチン上院議員(バージニア州)など反対派は、28%の税率は高すぎると主張している。ただマンチン議員は25%なら支持できるとの立場だ。議会上院は民主党と共和党の議席数が半々で、いかなる法案を通過させるにも、こうした反対派の支持が欠かせない。
バイデン政権は税率28%の提案が抵抗に遭い、身内である民主党の一部からも反発が出ることは分かっていた。事情に詳しい関係者3人によると、政権は税率25%も含めて、代替案について協議する用意があるという。
先に議会を通過し、3月半ばにバイデン氏が署名した新型コロナウイルス追加経済対策法案は、失業給付上乗せの期限が迫り緊急性が高かった。しかしインフラ投資計画は議論の余地があり、議会の役割はより重要になるとバイデン政権は考えている。
2013年に当時副大統領だったバイデン氏はオバマ大統領と、法人税率を35%から28%に引き下げ、製造業については25%まで下げることを提案したが、議会で阻止された。これまでのところ共和党は法人増税を支持しないと表明し、今回の計画は規模が大きすぎると批判している。
バイデン氏は7日にホワイトハウスで演説し「議論を歓迎する。妥協は不可避だ。修正があるのは間違いない」と述べた。バイデン氏は、近く共和党議員をホワイトハウスに招くと述べ、政権は「良いアイデアや誠意ある交渉を受け入れる用意がある」とした。
非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によると、法人税率が28%に引き上げられた場合の税収の増加額は8500億ドルで、インフラ投資計画の財源の大半が手当てできる。
一方、法人税率が25%なら税収の増加額は5000億ドル弱となり、民主党は別の財源を探すか、歳出を切り詰めざるを得なくなる。
バイデン氏は選挙戦で年間所得40万ドル以下の場合はいかなる家計にも増税しないとの公約を掲げていた。そのためガソリン税の引き上げや自動車マイレージ税の導入は政治的に非常に難しく、新たな財源探しは難航しそうだ。
CRFBのマヤ・マクギネス委員長は「非常に困難な公約だ」と話した。
(Jarrett Renshaw記者)
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