- 2021/04/13 掲載
風評払拭、政府に重い責任=原発処理水の海洋放出
政府が東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を正式に決めた。人体に影響がない程度に薄めて海に流す計画だが、健康被害への懸念はなお根強い。政府は風評の払拭(ふっしょく)に取り組む考えだが、具体策は見えず、消費者や近隣諸国の理解を得られる保証はない。福島県産をはじめ日本の食品の安全性を浸透させる重い責任を政府は負った。
海洋放出では、原発で発生する汚染水を特殊な浄化機器で繰り返し浄化し、トリチウム以外の放射性物質を基準値以下になるまで取り除く。その後、トリチウムを国の定める基準(1リットル当たり6万ベクレル未満)の40分の1程度に海水で薄めてから放出する。政府は、世界保健機関(WHO)の飲料水の水質ガイドラインよりも低いレベルだと説明し、安全性を強調する。
しかし政府が昨年10月に公表したパブリックコメントの結果では、書面で寄せられた約4000件の意見のうち7割が「処理水は人体に危険・有害」など、海洋放出の健康被害に対する懸念を訴えた。海洋放出は内外の原発でも行われているが、第1原発の場合、溶け落ちた燃料(デブリ)に触れた水である点がほかとは異なる。こうした不安に丁寧に答える努力が政府に求められている。
【時事通信社】 〔写真説明〕東京電力福島第1原子力発電所構内に立ち並ぶ処理水を保管するタンク=2月19日、福島県大熊町
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