- 2021/04/15 掲載
アングル:アント再編へ、IPO復活しても投資家は低関心か
再編指示の2日前には、アントの約3分の1の株式を持つアリババ・グループ・ホールディングが、独占禁止法に違反したとして当局から罰金180億元(約3000億円)を科せられた。
香港や米国に拠点を置く複数の投資家は、こうした一連の動きについて、アントの収益力や企業価値を低下させるとして、同社の将来性に懐疑的な見方を示している。
TFCフィナンシャル・マネジメントのダニエル・カーン最高投資責任者(CIO)は「再編後のアントがどうなるのか、非常に不透明だ」と指摘する。
昨年11月に予定されていたが、突如延期が決まったアントのIPOでは、企業価値は3150億ドルとされていた。一方、複数の関係筋が先月ロイターに明らかにしたところでは、一部のグローバル投資家は、2020年の業績を基にアントの企業価値を2000億ドル前後と算定しているといい、再編前から既に企業価値の低下が見られる。
チャイナ・ベージュ・ブックのリーランド・ミラー最高経営責任者(CEO)は、アントのIPO計画はいずれ復活すると考えているが、当局が(IPOを)急いでいるとは思わないとしている。
香港を拠点とするある投資家は、IPOは数年後とみている。
ベイ・ストリート・キャピタル・ホールディングスの創業者、ウィリアム・ヒューストン氏は、アントがフィンテック企業としてIPOを行うのか、銀行もしくは金融会社としてIPOを行うのかで、話は大きく変わってくるとし「銀行への投資を急ぐつもりはない」と述べた。
アントは、IPO計画や企業価値についてコメントを控えた。
<企業価値にマイナスの影響も>
エマージング・マーケッツ・インターネット&EコマースETFの創業者、ケビン・カーター氏は、今後は新たなルールがアントやライバル企業の抑制につながるとし「バリュエーションにマイナスの影響が及ぶことは避けられない」との見方を示した。
ただ、すべての投資家が悲観的なわけではない。
アイビー・インベストメンツのダン・ハンソンCIOは、アントが中国当局の標的になることは予想されていたとした上で「今回の再編は厄介なように見えるかもしれないが、アントに投資しやすくなるという利点もある。アントへの規制の可能性がこれまで大きな不透明要因だったが、(再編指示が出されたことで)それが解消された」と述べた。
一部の投資家は、アントが金融会社としてより高水準の資本を求められ、企業価値に影響するのではないかと懸念している。
ストーンホーン・グローバル・パートナーズのサム・ルコルニュCEOは「追加資本が求められれば、株主資本利益率(ROE)や総資産利益率(ROA)の低下につながる。企業価値への影響は必至だ」と指摘。一方で「(アントが)非常に優れたプラットフォームであるという事実に変わりはない」とも述べた。
(Ross Kerber記者、John McCrank記者)
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