- 2021/06/10 掲載
昨夏の東芝株主総会、公正に運営されずと調査報告書 経産省との一体性指摘
[東京 10日 ロイター] - 東芝が昨年7月に開いた定時株主総会を調査していた外部の弁護士は10日、同社が経済産業省と一体となって筆頭株主の提案権を妨げようと画策したなどとし、「総会は公正に運営されたものとはいえない」と結論づけた。
同総会を巡っては、筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが同ファンドの共同創業者などを社外取締役に提案したが否決された。一部の議決権が結果に反映されなかったり、経産省の関係者が複数の海外株主に事前に接触していたことが明らかになっていた。
調査報告書によると、東芝は同総会におけるアクティビスト(物言う株主)対応について経産省に支援を要請。同省商務情報政策局ルートと緊密に連携し、エフィッシモに株主提案を取り下げさせようとした。報告書は「改正外為法の趣旨を逸脱する目的で不当に株主提案権の行使を制約しようとするもの」としている。
改正外為法は、安全保障に関わる日本企業への外資規制を目的に、昨年6月に全面適用された法律。報告書は、東芝と経産省の行為は、安保上の理由でエフィッシモの提案を問題視して行われたと認めることは困難と指摘し、「随所に法令等に抵触する疑いのある行為すら見受けられる」としている。
当時社長だった車谷暢昭氏などの取締役選任に反対を表明していた大株主のファンド、3Dインベストメント・パートナーズ(3Ⅾ)に対しては、3Dがエフィッシモ提案の取締役選任議案に賛成の議決権行使を行った場合、安全保障貿易管理政策課から外為法に基づく何らかの措置が取られる可能性があることを示唆し、3Dの議決権行使判断に一定の影響を与えたと指摘している。
東芝と経産省の関与を巡って、ロイターは昨年12月、経産省の参与が米ハーバード大学の基金運用ファンドに対し、東芝側の意にそぐわない形で議決権を行使した場合、改正外為法に基づく調査の対象になる可能性があると干渉していたと報じた。
調査報告書は、経産省から依頼を受けた当時同省参与のM氏がハーバードと接触した結果、ハーバードは議決権すべての行使をしなかったと結論付けている。
東芝は、報告書の内容を慎重に検討して対応を開示するとしている。ロイターは経産省にコメントを求めたが、現時点で得られていない。
調査報告書によると、東芝は当時社長だった車谷暢昭氏が総会前の2020年5月11日、菅義偉官房長官(当時)との朝食会に出席。その際、同社長が菅氏に対し、株主への対応を「説明したと推認される」としている。
菅首相は10日、この報告書の記述に関する質問に、そのようなことはないと否定した。
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