- 2021/06/11 掲載
焦点:前政権より強固なバイデン氏の対中投資禁止、法で理論武装
バイデン氏が投資禁止対象に指定したのは中国の防衛や監視技術にかかわる59の企業・団体。米商務省の高官だったワシントンの弁護士、ケビン・ウォルフ氏は「禁止適用の間口が広がり、リストに加えるかどうかの判断基準はずっと低くなった」と述べ、法的な吟味にもより良く耐えられるはずだと説明した。
バイデン氏の大統領令が対象とするのは中国の防衛産業、関連素材セクター、監視技術の分野において「事業展開しているか、過去に事業をしていた」企業。そうした活動をしている個人が所有ないし経営権を持つ企業も含まれる。米国の安全保障や「民主的諸価値」を損なう企業に資金が流れるのを抑制する狙いで、人権侵害問題もリスト入りの理由にできる。
トランプ氏の大統領令は、何年も前の「国防授権法」の定義に基づく中国の軍事関連企業、実質的に中国人民解放軍ないし国有軍事産業と関係する企業が対象だった。今回、中国国家との直接的な関係性は禁止要件から削除された。防衛もしくは監視技術セクターで事業をしているという、より漠然とした要件の表現を新たに用いている。
トランプ氏の命令の補強が必要になったのは、中国企業3社が投資禁止の不当性を米裁判所に訴えたためだ。2社はリスト入りが差し止められた。残る1社は判断待ちだ。
戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザー、ビル・ラインシュ氏は「裁判所は通常ならば、大統領の国家安全保障に基づく決定事項を覆すのはためらう。それが覆されたということは、前政権の措置の設計や法的な守りを固めるのがいかにずさんだったかを物語る」と解説した。
<法的にもたない>
真っ先に提訴に動き、トランプ氏の投資禁止措置が抱える欠陥をあらわにしようとしたのは中国のスマートフォンメーカー、小米科技(シャオミ)だった。今年3月、米国の裁判官はシャオミが企業として中国の軍や政府とつながりを持っている明確な証拠に欠けるとし、投資禁止措置は「恣意的」だとして差し止めを命じた。
米政府側が提示した証拠の1つは、シャオミ会長が中国共産党の功労者として表彰されたことがあるということだった。しかし、この表彰は2004年以降、他に同国の企業家500人余りが受けており、しかも創業したての起業家らも含まれている。
米政府側はシャオミが第5世代(5G)移動通信システムや人工知能(AI)技術に投資していることも理由に挙げたが、米国の裁判官は、そうした技術は軍の近代化のためだけでなく、消費者向け機器の標準体系として急速に広まっていると指摘した。シャオミのリスト入りを決めた際の米政府のメモについても、言及された法律の引用が間違っているとし、米政府による「関連している企業」の定義の点も問題だと指摘した。
バイデン政権は5月、シャオミのリスト除外に同意した。
位置情報サービスなどを手掛ける中国のルオクン・テクノロジーも同様の判断を勝ち取った。
今回、このシャオミやルオクン、裁判所の判断待ちのもう1つの中国企業であるGOWINセミコンダクターは、バイデン氏が認定した投資禁止先には載っていない。
リストに残った主要企業は、中国海洋石油集団(CNOOC)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、半導体メーカーの中芯国際集成電路製造(SMIC)などだ。
香港の弁護士、ウェンディ・ワイソン氏はバイデン政権のリストの方が、よりしっかりした法的根拠に基づいているように見えると話す。「裏付けとなる論理は簡単に崩れそうにないし、指定範囲を狭くする言葉も使っていない。これに異議を申し立てるのは難しくなるかもしれない」という。
CSISのラインシュ氏は、今後はバイデン政権の踏み込み方次第で投資禁止措置の対象企業をもっと増やせる可能性があり、「理論的には、今の政権は範囲をかなり拡大することができる」と指摘している。
(Karen Freifeld記者)
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