- 2021/10/28 掲載
現在は若干の円安水準、日本経済には総合的にプラス=黒田日銀総裁
[東京 28日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は28日、金融政策決定会合後の記者会見で、為替による経済への影響はその時々の経済物価情勢によって変化するものの、総合的にみて現在の円安水準は日本経済にとってプラスになっているとの認識を示した。為替相場については、経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいとも指摘した。
外為市場では、ドル/円が急伸。9月下旬の109円後半から1カ月間で一時114円半ばまで上昇したため、記者会見では為替に対する質問が相次いだ。
黒田総裁は、為替相場の水準や短期的な動きにコメントは差し控えるとしたが、一般論として、為替レートの経済への波及経路は若干変化してきているのは事実だ、と述べた。
円安は原材料輸入比率が高い内需型企業の収益や家計の実質所得に対して押し下げ圧力になる一方、グローバル展開する企業の収益を押し上げ、賃上げや設備投資を積極化しやすくさせる効果があると指摘。その上で「現時点で若干の円安だが、これが『悪い円安』とか日本経済にとってマイナスになるということはない」と語った。
為替は経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することがもっとも重要であり、現時点でもそれは変わっていないとも述べた。
世界的な物価上昇率の高まりについては、基本的には経済活動再開に供給が追い付いていないことが要因と述べた。その上で、日本では海外で懸念されているようなインフレ高進のリスクはきわめて限定的との見方を示した。
<国内景気の現状、「基調としては持ち直している」>
日本の景気の現状については、新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるものの「基調としては持ち直している」との認識を示した。
輸出や生産は、足元では一部における供給制約の影響から弱い動きとなっているが、基調としては増加を続けていると語った。
個人消費については、感染症への警戒感などからサービス消費を中心に下押し圧力が依然として強いものの、足元では持ち直しの兆しがうかがわれると述べた。
日本経済の先行きは、当面、感染症によるサービス消費への下押しの影響が残るほか、輸出・生産が供給制約により一時的に減速すると見込まれるとした。ただ、その後は、ワクチンの普及などに伴い感染症の影響が徐々に和らいでいく中、回復していくとみられると述べた。
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