- 2022/01/27 掲載
アングル:日本株は「負の連鎖」、個人の投げ売りで下値不安増幅
[東京 27日 ロイター] - 日本株が「負の連鎖」に陥っている。保有株の下落で信用担保余力が落ちた個人投資家が指数寄与度の大きい値がさ株の換金売りに走り、指数を下げ、さらに売りを呼んでいるとみられている。企業業績は堅調で株価には割安感も出ているが、3月期末を控えた機関投資家は押し目買いを入れにくく、下げが止まらない。
27日の東京市場で、日経平均株価が一時、前日比900円を超える下落となり、約1年2カ月ぶりとなる2万6000円台前半まで水準を落とした。米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の会見内容がタカ派的と受け止められ、金利が上昇、ハイテク株などを中心に幅広い売りが出ている。
日本ではマザーズ総合が6.6%の急落。ソニーグループも6.7%下落した。「保有株が下落し、信用担保余力が低下した個人投資家がソフトバンクグループや、ファーストリテイリングなど指数寄与度が大きい銘柄を売却。指数の下落に拍車がかかり、さらに売りを促している」(国内運用会社)という。
日経平均の予想PER(株価収益率)は26日時点で13.31倍(日経新聞調べ)。歴史的な平均レンジといわれる14─16倍を割り込んでいる。足元の企業業績は堅調だ。しかし、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の感染が急拡大。経済活動の抑制が始まる中で、先行きの景気には不透明感も漂う。
売られているのは日本株だけではない。27日のアジア市場では、韓国や香港の主要株指数が大きく下落している。MSCIアジア太平洋株価指数(日本除く)は2020年11月以来の安値を付けた。投資家の余裕が失われつつあるのは日本に限ったことではない。
しかし、株安には日本特有の要因も絡んでいるとみられている。「3月期末が迫る中、ここで買って下落すれば評価損につながる。割安感があるとみても、そういうリスクは今は避けたいと考える機関投資家は少なくない」(国内証券のセールス担当者)という。日銀のETF(上場投資信託)買いのペースは落ちており、以前ほど期待できない。
25─26日のFOMC後の会見でパウエルFRB議長は、高インフレと低い失業率を挙げ、前回の利上げ局面が始まった2015年と経済状況は「大きく異なる」と指摘。労働市場の改善や景気回復を脅かすことなく「金利を引き上げる余地が十分にある」と当局者らは認識している、とした。
大和証券のチーフ・グローバル・ストラテジスト、壁谷洋和氏は、FRBが過度なタカ派的でない見通しが明確になるとの期待が打ち消された印象だとみる。「毎回の会合で利上げする可能性に含みを残し、資産縮小(QT)開始も年前半との印象を市場に与えた」と話す。
市場では「最近の株安に対する配慮が感じられなかった。いわゆるパウエル・プットはしばらく期待できない。利上げペースも当初は速い可能性があるとして、警戒感が強まっている」(国内銀行)との声が出ている。
(伊賀大記 取材協力:平田紀之 編集 橋本浩)
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