- 2022/03/04 掲載
苦境に陥るロシア経済=通貨暴落、打つ手乏しく―ウクライナ侵攻
【ロンドン時事】ウクライナ侵攻で制裁を受けるロシアの経済が苦境に陥っている。外国為替市場で通貨ルーブルは暴落し、株式市場では取引停止が続く。ロシア政府・中央銀行は事態打開へ手が打てず、経済の混乱が長引く恐れがある。
外為市場では3日もルーブル売りに歯止めがかからず、一時1ドル=118ルーブル台に下落。2月28日に付けた史上最安値の近辺に沈んだ。侵攻後の下落幅は50%近くに達する。
ロシア中銀は政策金利を9.5%から一気に20%に引き上げ、輸出企業に外貨収入の80%売却を義務付けた。ロイター通信によると、外貨を購入する個人に30%の手数料も導入。だがルーブル安は止まらず、通貨防衛に手を焼いている。
通貨暴落は、為替介入の原資となる外貨準備が凍結されたことが主因だ。ロシアは2014年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合して制裁を受けて以来、外貨準備を積み上げ、21年6月時点で5853億ドル(約67兆円)を保有。基軸通貨ドルへの依存も減らし、ドル建て資産の割合を16.4%と3分の1程度まで圧縮する一方、中国人民元などを増やした。だが今回の制裁ではドルに加え、ユーロや円などの外貨準備も凍結され、ルーブルを買い支えられなくなった。
また、世界の銀行決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からのロシアの一部銀行の排除で、金融機関の信用不安が拡大。銀行や現金自動預払機(ATM)に市民が殺到して預金を引き出しているが、一定額が外貨預金とみられる。
一方、モスクワ株式市場は2月28日以降、取引停止が続く。ただ、ロンドン証券取引所に上場しているロシア企業の預託証券は既に暴落。最大手銀ズベルバンクの証券は紙くず同然となっている。
主要格付け会社はロシアを投資不適格の「投機的水準」に引き下げ、国債のデフォルト(債務不履行)懸念が強まる。英調査会社オックスフォード・エコノミクスは、ロシアの23年の国内総生産(GDP)が7%縮む可能性があると予想。「これでも最悪のシナリオではない」とさらなる波乱に警鐘を鳴らしている。
【時事通信社】 〔写真説明〕現金自動預払機(ATM)から現金を出そうと列を作る人々=2月27日、サンクトペテルブルク(ロイター時事)
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