- 2022/03/12 掲載
アングル:世界の中銀、なおインフレ対処重視 経済成長より物価
今回の侵攻から生じる幅広い経済上の打撃では、欧州が最もぜい弱かもしれない。しかし、欧州中央銀行(ECB)は10日、経済成長への打撃は吸収できるだろうが、ユーロ圏で広がる物価上昇に背を向ける余裕はないとの考えを明示した。ECBは主要な債券購入プログラムの終了時期を早める予想外の発表をし、年内の利上げにも道を開いて見せた。
ECB当局者は「その気になれば何を持ってもインフレを抑えることになる。コアインフレは中銀目標を上回ってさらに上昇している。われわれには2%の物価目標があるのに、これを守れていない」と語った。
同様の姿勢は米国や、他のほぼあらゆる中銀から聞かれる。それまで経済リスクに重きを置いていた中銀当局者がコロナ禍からの経済再開に伴い、想定外の大きな、長期的なインフレ上昇に対抗を迫られるという現実に直面している。
ウクライナ侵攻で世界の株式市場は急落し、金融市場のストレスを示す指標は上昇し、特に石油価格は大きく押し上げられた。とは言え、このどれ一つとっても、少なくとも今のところは金融のシステミックな問題までは示していない。米連邦準備理事会(FRB)やほかの中銀はこれまでも、市場の安全装置が適切に備わっていると確信していると表明してきている。
中銀当局者の視野のもっと中心にあるのは、世界の主要国・地域で経済成長はトレンドを上回り続けるとの見通しと、これがあるために、中銀目標をはるかに上回って上昇するインフレにもっぱら取り組む余裕があるという考え方だ。
カナダ銀行は今月、利上げに動いた。イングランド銀行とFRBは来週に利上げすると見込まれている。いずれも向こう何カ月かでさらなる利上げを続けると予想されている。
財務省の立場からさえ、インフレ高騰のダメージを強く意識する声が聞かれる。イエレン米財務長官は10日、ワシントン・ポスト紙のインタビューで、インフレが「途方もない懸念だ」と強調した。
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