- 2022/03/23 掲載
金融庁、男女賃金の開示義務化 23年度にも有価証券報告に適用=関係筋
事情を知る複数の政府関係者が明らかにした。男女それぞれの賃金水準を有価証券報告書に記載するよう内閣府令を改正して義務付ける。女性管理職比率や男性の育児休業取得率を記載項目に加えることも検討する。
金融庁は作業部会で企業の情報開示の在り方を議論している。気候変動開示、四半期開示の見直しと並び、男女格差の是正につながる項目の追加も主要テーマで、今春をめどに報告書をまとめる。厚生労働省も女性活躍推進法に基づく開示義務化を検討しており、歩調を合わせて調整を進める。
経済官庁の幹部は「男女の賃金格差問題は経済・財政問題でもあり、官邸は危機感を持っている」と説明。「他の国はすごいスピードで走っている。日本は今までの3倍くらいの速さで走らないといけない」と話す。
厚労省の2020年賃金構造基本統計調査によると、フルタイムで働く女性の平均所定内給与は月額25万1800円。男性の33万8800円の7割強にとどまる。
経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の男女間賃金格差は主要7カ国(G7)の中で最も大きい。また、世界経済フォーラムが経済・政治・教育・健康の4項目をもとに作成している男女格差の指数「ジェンダーギャップ指数」で、日本は156カ国中120位にランクする。
男女の平均賃金は1999年3月期まで有価証券報告書に記載が義務化されていた。連結決算が導入され、企業の財務関連諸表の作成負担が重くなる中で廃止された経緯がある。
労働問題に詳しい日本総研の山田久副理事長は「男女の賃金格差の統計を公表することは大事だが、なぜ女性の賃金が上がっていないのか、なぜ男女の格差があるのかという包括的な理解が必要だ」と指摘。「全体像をみてそれぞれの課題を解決することが求められる」と話す。
金融庁の資料によると、フランスでは従業員50人以上の企業に対し、男女賃金格差の指標と是正措置を自社ホームページで公表することを法律で規定している。英国では、従業員250人を超える企業を対象に男女間の給与差の詳細を公表するよう法律で求めている。
(金子かおり、和田崇彦 編集:久保信博)
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