- 2022/04/27 掲載
アングル:マスク氏のツイッター買収で試されるテスラ経営陣
マスク氏はツイッター買収を発表した際に、ツイッターは人類の未来に関する重大な問題を議論する「デジタルタウンの広場」で、言論の自由を確保すると強調した。同時に改めて浮上したのは、かつてセダン車「モデル3」の市場投入時には工場のフロアで寝起きしていたと認め、昨年は自らの労働時間が常軌を逸していると発言したマスク氏に、果たしてどれだけ「余力」があるのかという疑問だ。
資産運用会社ガーバー・カワサキCEOでテスラ株主のロス・ガーバー氏は「テスラは時価総額1兆ドルの企業になっているにもかかわらず、まるでスタートアップ企業のような感じだ。世界最大級の企業にひけをとらないか、しのぐ存在なのだが、他の大企業に備わる経営のインフラを持っていない」と指摘した。
さらにテスラは今、サプライチェーン(供給網)混乱と原材料高という逆風の中でテキサス州とベルリンの工場で増産し、新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われている中国上海にある同社最大の工場の稼働を正常化させるという課題を背負っている。マスク氏は1月、テスラは目の前にこなすべき事案が多過ぎるので、年内にサイバートラックなどの新型車は導入しないと述べた。
これまでのところ、テスラは何とか問題を処理してきたとはいえ、マスク氏がツイッターにより大きな注意を向けていることが、投資家には心配でならない様子だ。
テスラ株をかなり保有するファンドマネジャーの1人は、マスク氏が既にサプライチェーンや工場生産の遅れ、エネルギー貯蔵事業などの問題を持てあましている中で、ツイッターが同氏の集中力を散漫にさせる要素になるのではないかと懸念を示した。
マスク氏がツイッター買収交渉をまとめ上げたことを受け、テスラの株価は26日に10%強も急落。ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイブス氏によると、これはマスク氏が買収資金を得るために手持ちのテスラ株売却に動くとの観測に加え、マスク氏がテスラ経営をおろそかにしかねないという不安も影響したという。
テスラはコメント要請に回答していない。ただある関係者は、投資家の心配は「行き過ぎ」で、マスク氏は引き続きテスラの経営に深く関与していくと明言した。
マスク氏は、宇宙開発企業スペースXや、医療系スタートアップ企業ニューラリンク、トンネル採掘会社ボーリング・カンパニーの経営のかじ取りも担っている。
ではテスラのマスク氏以外の経営陣はどうなっているのか。2019年には共同創業者の1人、J・B・ストローベル氏が最高技術責任者(CTO)を辞任し、昨年はジェローム・ギレン社長が会社を去った。
ウェブサイトを見ると、マスク氏とともにリーダーシップチームのメンバーに名を連ねているのはわずか2人。対照的にゼネラル・モーターズ(GM)の最高経営幹部は17人、フォルクスワーゲン(VW)も11人に上る。
テスラで現在、マスク氏以外で知名度があるのは最高財務責任者(CFO)のザカリー・カークホーン氏と、パワートレイン開発を担当する上席副社長のアンドルー・バグリノ氏になる。2人とも四半期決算のアナリスト向け電話会議に出席するため、投資家の間ではよく知られている。
ダコタ・ウエルスのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロバート・パブリク氏は、マスク氏がツイッターのトップに他の誰かを起用するのではないかとみている。「それが最も合理的に思われる。マスク氏はテスラとスペースX(の経営で)手いっぱいだろう」と話す。
ガーバー氏は、恐らくマスク氏に必要なのは、スペースXにおけるグウィン・ショットウェル社長のような強力な「ナンバー2」ではないかとの見方を示した。
自動車コンサルティング会社AMCIのイアン・ビービス最高戦略責任者は、別の意味でマスク氏によるツイッター買収に懸念を表明した。ツイッターが政治的、社会的問題を巡る論争の的になっているだけに、それがテスラのブランドを傷付けてしまう恐れがあるという。
(Hyunjoo Jin記者)
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