- 2022/04/28 掲載
東芝など、東芝アメリカと米CQEがQKDネットワークリンクの実証を開始
東芝アメリカ社は、2021年6月にCQEにパートナーとして参画し、これまでQKDネットワークリンクの構築に向け、協議・準備を進めてきました。今般、QKDネットワークリンクを構築し、実証を開始する運びとなりました。実証によりCQE参加機関と量子技術ベンダーの間のコラボレーションを強化し、今後、将来の量子インフラ構築や量子人材確保につながることが期待されます。
QKDは、研究フェーズから実用化フェーズに移行した最初の量子技術の一つであり、将来盗聴することを目的に、暗号化された機密情報を今は保存のみし、量子コンピューターが利用可能になったときに復号化し解読するといった「刈取り攻撃」の防御に向けた早期対応を可能にします。量子コンピューターは現代のセキュリティ方式を破る力を有すると言われており、量子コンピューターによる解読に耐えうる耐量子暗号通信の仕組みを開発することは、今後想定されるセキュリティ問題の解決につながります。
東芝の執行役上席常務、最高デジタル責任者、および東芝デジタルソリューションズの取締役社長の岡田俊輔は、「刈取り攻撃は量子の未来がもたらす最も直接的な脅威の一つです。多くのデータは、時間の経過とともに利用価値は減少しますが、一部の情報は盗難後、相当な時間が経過した後も元の所有者に損害を与える可能性があります。量子産業自体の成長と並行して耐量子技術を開発することが、量子の未来がもたらす脅威を抑制するための最も積極的なアプローチであると確信しています。」とコメントしました。
量子産業の市場は2030年までに34億ドルに達すると予想されており(注)、量子の将来に備えて、ハードウェア機能・ソフトウェア互換性、セキュリティ等を確認するための長期的な実証環境が必要となります。CQEの研究者は、ネットワークにノイズを注入し、ノイズがネットワーク上の通信やセキュリティにどのように影響するかを把握したり、デバイスを量子メモリに接続したりと、今般のネットワークリンクを用いたさまざまな実証を行う予定です。
シカゴ大学教授兼研究副学部長、アルゴンヌ国立研究所上級科学者、およびCQEディレクターであるDavid Awschalom氏は、「我々は、様々な業界の組織が我々と共に量子イニチアチブに投資することを願っています。量子産業が成長するにつれ、米国内ネットワークの基盤を確立するための専用インフラストラクチャを整備する必要があります。今般のパートナーシップを通して行われる研究とエンジニアリング、そしてその可能性は、明日の量子人材の育成と安全な国家量子ネットワークの構築に大いに貢献するものです。」とコメントしました。
注:2021年12月発行のIQT (Inside Quantum Technology)社QKD市場調査報告より。
https://www.insidequantumtechnology.com/product/quantum-key-distribution-markets-qkd-in-a-quantum-safe-world-2021-2030/
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