- 2022/06/09 掲載
アングル:封鎖明け上海市、外国企業に積極対応 信頼回復なるか
具体的には、外国企業と対話する機会を数多く設け、いったん出国していた駐在員の再入国に関する規制を緩和するといった形だ。
ロックダウンは2カ月におよび、この間に数え切れないほどの駐在員が退去を余儀なくされ、外国企業からは投資計画の再検討を警告する声が満ちあふれ、中国で最も国際的で最大の商業都市という上海のイメージは失墜した。
こうした中で上海市は、今月中に自動車や商社、半導体、バイオ医薬品など主要分野の外国企業と計20回の会合を開く計画だ。市政府系の地元紙が5日伝え、市のホームページにも改めて記事が掲載された。
対話の相手に選ばれたのは、中国に大規模な投資をしている米国や欧州、日本、韓国などの地域の企業。上海市の発表によると、今月初め以降で既に4回のオンライン会合が開かれている。
初回会合には、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)などの幹部が出席。2回目にはテスラやフォードといった米自動車メーカーが顔を見せた。
さらに欧州商工会議所は7日、ある会合で上海市の副市長から、働くために上海に戻ってくる外国人とその家族に、もはや当局は工作許可通知(PU招へい状)の取得を義務付けないと通知されたことを明かした。
中国はパンデミックが猛威を振るっていた2020年初め、国境管理を極めて厳格化する目的で、外国人に対して労働ビザ申請手続きの一環としてPU招へい状を取得するよう要求。多くの外国企業は取得の難しさや時間の長さに不満を表明し、外国人スタッフ採用の妨げになっていた。
<ゼロコロナの弊害>
欧州商工会議所は、PU招へい状の取得義務撤廃について「上海での労働と生産の再開を促進しようとしている中央政府主導の取り組み」と解説した。
この問題で上海市政府にコメントを求めたところ、当局は5月下旬に1人の高官が行った発言をあらためて持ち出した。当時、この高官は新型コロナが上海の外国貿易と投資に悪影響を及ぼしたと認めた上で、企業界の信頼向上に向けた措置を講じ、多国籍企業が上海に地域本社や研究開発センターを設置する手助けをしていくと強調していた。
英中ビジネス評議会のマネジングディレクター、トム・シンプソン氏は、数週間中に上海市側と会談する予定だと明かし、市当局は評議会メンバーの企業に物流関係の許認可や倉庫再開などの「より実践的な」支援策を提供していると述べた。
ロックダウン期間中、上海市は各工場についていわゆる「クローズド・ループ方式(従業員を工場内に閉じ込めて仕事だけでなく、生活までさせること)」での操業を続けさせようとしてきた。ただ、この方式には多くの困難な問題がある、というのが企業側の訴えだった。
一方、この2年余りで大半が欠航となった中国に乗り入れる航空便の乏しさも、なお大きな課題として残る。
中国は、新型コロナウイルスの感染を徹底して封じ込める「ゼロコロナ政策」を堅持する構えだが、これはワクチン接種の広がりとともに経済活動再開にかじを切った世界の多くの地域とずれが生じている。
欧州商工会議所のイエルク・ブトケ事務局長は、ゼロコロナ政策は上海の魅力を損なっているばかりか、特に他のライバル市場が門戸を開いて中国から企業を取り込もうとしているだけに、中国全体に打撃を与えていると主張。「世界は中国が今の混乱を収めるまで待ってくれないだろう」と忠告した。
(Brenda Goh, Zhang Yan, Martin Pollard, Sophie Yu and Yew Lun Tian記者)
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