- 2022/06/11 掲載
円安加速、コスト増を危惧=輸出企業も急変動懸念―産業界
為替相場で円安が加速し、産業界では幅広い業種で原材料価格などのコスト増加を危惧する声が一段と大きくなってきた。輸入企業にとっては、円安は業績の下押し材料。従来は円安の恩恵を受けてきた輸出企業からも、為替相場の急変動に懸念が出始めている。
資源価格が高騰する中、燃料である石炭や液化天然ガス(LNG)を輸入する電力・ガス業界では、円安が輸入コストの上昇に拍車を掛け企業業績を圧迫する。関西電力は2023年3月期の為替レートを1ドル=125円と想定するが、これより1円円安になると同社の経常利益は80億円減少する。
大阪ガスは、1円の円安で経常利益が6.6億円減少する。このまま燃料費の上昇が続けばガス料金への転嫁も避けられず、関係者からは「急激な円安は収まってほしい」との悲鳴も上がる。
建設業界も、資源高と円安を背景とする鉄鋼価格の上昇に苦しむ。日本建設業連合会の宮本洋一会長は「下請け会社にしわ寄せが生じないよう、契約を適切な工事代金に変更することが重要だ」と強調。業界を挙げて発注先に値上げへの理解を求めている。
原材料価格の高騰から既に商品の値上げが相次ぐ食品メーカーも、急激な円安は一段の逆風となる。明治ホールディングス(HD)は23年3月期の為替レートを1ドル=120円と見込むが、直近は135円に迫る勢い。1円の円安で営業利益が2.5億円減る見通しで、HD傘下の明治の松田克也社長は「(為替相場は)とんでもないことになっている」と困惑する。
一方、自動車大手や機械などの輸出企業にとっては、円安は引き続き業績の上振れ要因。トヨタ自動車は、1円円安になると営業利益が450億円増加すると見込む。
しかし、こうした輸出企業でも、急速な円安により「(輸入する)部品の調達コスト増などの懸念も出てくる」(日立建機)といった警戒の声が多くなっている。ホンダの竹内弘平副社長は「(円安の背景にある)日米金利差やロシアのウクライナ侵攻など地政学問題を考えると、単純に(円安を)ウエルカムとも言えない」と指摘する。
【時事通信社】
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