- 2022/06/13 掲載
焦点:見えない物価の天井、FRB利上げ加速で米株と債券ダブル安
5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.6%上昇。1981年12月以来、40年5カ月ぶりの上げ幅を記録した。市場は4月(8.3%上昇)がピークと予想していたが、ふたを開ければさらに加速した。
株は大崩れ。米国債も売られ、10年債利回りは5月9日以来の高水準を付けた。こうした市場の反応は今後数週間の展開の前触れかもしれない。
「(インフレが)ピークを迎えるという多くの期待が打ち砕かれた」と話すLPLファイナンシャルのチーフマーケットストラテジスト、ライアン・デトリック氏は「インフレに対する懸念と米企業利益への潜在的な影響がここにきて投資家の不安を大きくしている」と指摘した。
FRBの引き締めを受け、株と債券は今年大半の期間をそろって下落。両資産の組み合わせで運用リスク軽減を狙っていた投資家は大打撃を受けた。ただ、この数週間はインフレがそろそろピークに達し年後半にはFRBが引き締めを緩めるとの期待から市場では持ち直しの動きも見られた。
しかし、市場はFRBが今後3回の会合で少なくとも50ベーシスポイント(bp)利上げすると予想する。
キャピタル・エコノミクスのアナリストは10日、「米国の物価上昇圧力が緩和する兆しが乏しく、FRBがすぐにブレーキを踏むとは思えない。したがって米国債利回りはさらに上昇し、株式市場は引き続き圧迫され、米国市場にはさらなる痛みが待ち受けている」と予想した。
S&P総合500種指数は年初来で18.2%下落。弱気相場入りと見なされる最高値から20%下落に再び近づいている。住宅ローン金利やその他の金融商品の指標となる米10年国債の利回りは、2倍以上に上昇している。
フェデレ-テッド・ヘルメスのチーフ株式ストラテジスト、フィル・オーランド氏は、資産構成の現金比率を最高の6%に高め、債券の保有を減らした。株は、エネルギーなど物価上昇の恩恵を受けると予想されるセクターに多めに投資している。
フィル・オーランド氏は「今後数カ月、市場は非常に厳しい状況が続くだろう。投資家は、これまでの一致した見方が間違っていてインフレがなお問題であることを受け入れなければならない」と指摘。成長停滞と物価高が同時進行するスタグフレーションへの懸念が市場の主たる推進力になっていると見ている。
CPIの発表前にBoFAグローバル・リサーチがまとめた機関投資家調査によると、今後12カ月の間に世界経済がスタグフレーションに陥ると予想したのは77%で2008年8月以来の高水準となった。
<FRBの利上げ加速へ>
5月のCPIを受け、米銀行の間ではFRBの利上げ予測を引き上げる動きが見られた。
バークレイズは、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で28年ぶりとなる75bpの利上げを予想。ゴールドマン・サックスは、今後3回の会合で各50ベーシスポイントbpの利上げすると予測した。
フェデラル・ファンド(FF)金利先物が反映する、7月までに75bp利上げの確率は5分の1と、CPI発表前の20分の1から跳ね上がった。
こうした中、株の下落がFRBの引き締めにブレーキをかけると考える投資家はほとんどいない。
CPI発表前のBoFAの調査では、世界の債券投資家の34%がFRBは株安を完全に無視し市場が機能不全に陥った場合にのみ利上げを一時停止すると考えている。
キャピタル・グループの債券ポートフォリオマネジャー、プラモッド・アトルーリ氏は「インフレ率は8.5%でピークを迎え、年内は下落基調になると考えていたが、そうはならなかった」と語り、果たして3回の50bp利上げで十分なのか思案している。
(David Randall記者、Davide Barbuscia記者)
*記事の内容は執筆時の情報に基づいています。
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