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  • 2022/12/24 掲載

メタバースが「生活に定着する」超現実的な2つのシナリオ

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「ファイナルファンタジーXIV」(以下FF14)にしろ、MinecraftやRobloxなど、一部のメタバースには多くの人が集う。一方で、閑散としているメタバースサービスも少なくない。どのように人々はメタバースに集まってくるのか。この疑問に対して、「メタバースへの興味は『メタバースの外側』で生まれるものです」と説くのは、ITジャーナリストの西田 宗千佳氏だ。『メタバース×ビジネス革命』を上梓した西田氏にメタバースが多くの人の生活そのものを変える具体的なシナリオについて解説してもらった。

執筆:西田 宗千佳

執筆:西田 宗千佳

ITジャーナリスト。 1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿するほか、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「ポケモンGOは終わらない」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)、「ネットフリックスの時代」(講談社現代新書)、「iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)がある。

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メタバースに参加したい、使ってみたいと思う動機は「メタバースの外側」から生まれる
(Photo/Getty Images)

メタバースへの興味は「メタバースの外側」で生まれる

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 メタバースに人々はなぜ集うのか。

 その答えは、ネットワークゲームではない『サイバーパンク2077』の事例に表れている。何か他の話題があり、「あの場所に行ってみたい」と思うことは、非常に大きなモチベーションになりうるのだ。

 それはまさに「観光」そのものである

 行ってみて体験が良ければ、人々はまたそこに集う。音楽ライブのために集まったファンは、お互いが知らない者同士であっても、同じアーティストのファンであるということから親しくなる。

 行きたい・集まりたいという感情を引き起こすものは、まだ体験したことのないメタバースの中にあるのではない。多くの人はまず「メタバースの外側」で興味を惹かれるのである。そこからメタバースの中に入っていき、その場所でコミュニティを作る。

 ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」のような、濃密なコミュニティを形成しているサービスも、それは「メタバースだから」コミュニティが形成されたわけではないと思う。キャラクターだったりイベントだったり何かしらメタバース外の要素に惹かれるものがあったからこそ、そこに新しいコミュニティが生まれたのだろう。

 コミュニティが重要なのは間違いないが、それは場所を用意すれば出来上がるほど簡単なものではない。外からいかに魅力を持ち込み、メタバースの中に快適な場所を作るのか、という考え方が必須になるということだ。

 よく知っている場所を3D化したとしても、そこに新しく興味を惹くものがあるかはまた別の話だ。そして、一度その場所に行ったときの体験がよくなければ、人は再び訪れることはない。

 広告や街おこしなどのためにメタバースを作るのはいいのだが、サービスとして継続的な変更を加え続け、外から人を集め続けられるかどうかは、非常に大きな課題だ。

 ネットで「ハコモノビジネス」は成立しない。作っても人がこなければ意味がないし、作ること以上に、運営し続けることにコストがかかるからだ。3Dのオブジェクトを置くだけで、改修も運営もせずに放置では、コストをかける意味がない。

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ネット上では、ただ存在しているだけで価値が生まれる「ハコモノビジネス」は成立しない
(Photo/Getty Images)

メタバースが生活に定着する2つのシナリオ

 ゲームは「遊び」の魅力で人を惹きつける。一方で、世の中のすべての人がゲームに興味を持つわけではない。たくさんの人を集めるために、お金をかけて多くの、質の高いコンテンツを作るのは1つの王道だ。

 ただ、ヒットが約束され、色々な収益構造のあるゲームならその方法論も採れるが、ゲーム以外ではなかなか難しい部分がある。

 そう考えると、メタバースが大きなビジネスとして生活に定着するようになるには、2つのルートがあるように思えてくる。

 1つは、結局のところ、メタバースは携帯電話やPCと同じ道筋を辿る……というパターンだ。これは一番わかりやすい。

 携帯電話でもPCでも普及においてゲームは重要な要素だったが、それだけでヒットしたわけではない。結局は「毎日、誰もが使う要素」として、コミュニケーションや仕事などでのニーズがあった。逆に、それらが必須となってしまえばスムーズに普及していくのだ。だから、会議システムやビジネスツールとしてのメタバースの開発が広がるのだが、そこではコストとバリューのバランスも重要になるだろう。そう考えると、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を必須としない、PCやスマホの画面上で使うメタバースのほうが先に普及する、と考えるのが自然である。

 ただ、そのことでどれだけの「楽しさ」「新しさ」「便利さ」を訴求できるかは難しいところだ。やはり、今までにない驚きや新鮮さは重要だ。そして、スマホを覗くのではない快適さを生み出す、新しい生活の基盤になるには、自分の周囲5mのデバイスであるHMDの進化が求められている、ということにもつながっていくだろう。

 ここは完全な鶏と卵の議論であり、HMDの進化を信じられない人には、やはり、メタバースのビジネス拡大はなかなか納得しづらいところがあるかとも思う。

 携帯電話も「携帯電話」というハードウエアの進化があって、それとサービスがセットになって進んでいった。それに比べると、メタバースはまだHMDというハードウエアが追いついていない。現在はまだ助走中なのだ

【次ページ】「作ること」で「儲かる」世界へ

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