デンセイ・ラムダの経営状況に関するデータは、すべてマネジメントポータルから閲覧することができる。データはさまざまな切り口で加工され、コクピットと呼ばれる画面ではメーターだけが並んでいる。良好な状態のものは緑、思わしくないものは赤の方にメーターが振れており、実に直感的。利益に問題なくても、R&Dで赤信号が出ているといったことを一目でチェックできるのだ。

　見られるデータは社内のものだけではない。特定の業界についての受注動向データをインターネット上からダウンロードして、それを自社の売上と重ねて表示することまでできてしまう。

さらに、棚卸からもこれまで以上に多くのデータが得られるようになった。これにより、利益が少ない割にリスクの高い商品を把握して、これらの取扱高を減らすことが可能になる。また、販売先の納期パターンに合わせて在庫管理を行うことで、過剰在庫を抑えながら納期遅れを減らすことができるようになったという。

　見える化は、業績に目覚ましい影響を及ぼした。2002年にはマイナス1.2%だった営業利益率が、2003年にはプラス3.4%、2004年にはプラス6.0%となった。社員数はほとんど増やしていないが、1人当たりの生産性が倍近くまで向上したのである。

　マネジメントポータルを使えば、経営層が必要なデータを2～3分程度ですぐ手に入れられる。いちいち部下にレポートを提出させていたら、それだけで30分程度かかることを考えれば圧倒的なスピードアップだ。

　個々の業務だけでなく、経営戦略自体も大幅にスピードアップされた。経理処理後の売上データが出てからでは、せいぜい年に2回しか対応策をとれない。これに対し、BIを活用し受注の時点で売上予測を行えば、年に4回以上の適切な対応策を取れることになる。


マネジメントポータルから見られるレポートの一例。月別、地域別の状況が一覧できる。どの時点から問題が出始めたのかといった調査も手軽に行える。


アクションの取れるレポートを
作ることが重要

　しかし、単純にBIツールを入れても業績向上に結びつくとは限らない。振り返り片寄氏は述べる。
「日本地図上に営業所ごとのグラフが表示するようなことが可視化と思われていたりしますが、こういうものはデモンストレーションに過ぎず、あまり役には立ちません。レポートというのは、それに対してアクションの取れるものでなければなりません」。

「また、せっかくBIツールを入れても、それを経営層が見なくては意味がありません。現状を把握し、いかにして次の戦略に組み込むのか、経営層が常に気を配らなければ、経営戦略のチャンスを見逃すことにもなりかねません。そこで、レポートを見るべき人にはメールを送り、添付ファイルをクリックすれば適切なレポート画面が立ち上がり、またドリルダウンで詳細なデータを見ることができるようにもしました。これでマネジメントポータルの利用率はかなり上がりましたね。こういうプッシュ型で情報配信をするといった工夫も重要でしょう」

〈※注1〉Hyperion Enterprise 連結経営管理レポート。
グローバルに事業を展開している企業における経営実績情報の収集、連結、レポーティングの効率化を図るアプリケーション。
〈※注2〉Hyperion Essbase 総合BIプラットフォーム。
財務分析や販売分析、あらゆる分野の経営分析をサポートし、企業の業務効率改善を支援する。

〈執筆：山路達也、写真：相川大助〉

［名称］ デンゼイ・ラムダ株式会社
［設立］ 昭和53年6月6日
［資本金］29億4,102万円 ［従業員数］　664名（平成16年3月31日現在）
［売上高］単体 30,498百万円 （平成16年3月期） 　
［連結］ 34,105百万円 （平成16年3月期）
［事業内容］スイッチング電源とその周辺機器、無停電電源装置と
発電装置等の電源システムの開発製造販売並びに保守サービス