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  • 2023/12/14 掲載

生成AIで「勝者はマイクロソフト」は変わらない、クラウド市場での躍進が続くから

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OpenAIの“お家騒動”を巡り、結局「勝者」は誰だったのかを問う報道は多い。当初、圧倒的な勝者とみられていたマイクロソフトとサティア・ナデラCEOだが最終的に、OpenAIの社員は誰一人としてマイクロソフトに移籍しなかったため、「当て馬にされただけ」との評価も聞こえてくる。しかし、今や「本業」であるクラウド市場に目を向けるとまったく違う風景が広がる。生成AIトレンドの追い風に乗ったマイクロソフトはアマゾン(AWS)の牙城で躍進を続け、市場シェアを伸ばしているのだ。

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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クラウドプロバイダーシェアの推移
(出典:Synergy Research Group

クラウド市場の地殻変動、アマゾンの牙城でシェア拡大

 生成AIの爆発的な普及は、直接・間接的に他の市場にも影響を及ぼしている。たとえば、生成AIモデルのトレーニングや推論で用いられるコンピュータチップ(GPU)の市場では、NVIDIAが売上高を更新し続けており、同社の時価総額も1兆ドル台で安定しつつある状況だ。NVIDIAは生成AI時代のまぎれもない勝者の1社だろう。

 そして、同様の影響はクラウド市場にも波及している。

 クラウド市場は長らくアマゾン(AWS:Amazon Web Services)の牙城だったが、数年前からOpenAIへの巨額投資を行ってきたマイクロソフトのクラウドサービスAzureのシェアが拡大しており、生成AIの普及に伴い、今後さらにシェアを伸ばす公算が高まっている。

 Synergy Research Groupが2023年10月26日に発表した第3四半期の市場調査レポートによると、今期のクラウド市場の売上高は前年同期比18%増の680億ドルだったことが明らかになった。増加額は105億ドルで、100億~110億ドル台での増加は5期連続になるという。

 クラウド市場は上位3社がシェアの66%を占めている。トップはAWSだが、シェアの成長は止まっており、過去3年のシェアは32~34%で推移している。

 一方、今期を含めここ2~3年で急速にシェアを伸ばしているのがAzureだ。

 2018年第4四半期時点におけるAzureの市場シェアは15%。市場2位に位置していたものの、当時約34%のシェアを持っていたAWSとは2倍以上の差があった。

 しかしマイクロソフトの市場シェアは順調に拡大を続け、2022年には20%台に到達、2023年第2四半期には21%に拡大した。そして今期には前期比2ポイント増となる23%に拡大したのだ。AWSとの差は10ポイントほどまで縮まったことになる。

 マイクロソフトの最新発表によると、2023年第3四半期のクラウド・インテリジェンス・ビジネス・ユニット事業の売上高は243億ドルだった。このうちAzureの具体的な金額は公開されていないが、売上高は前年比29%の増加を記録したという。今期におけるマイクロソフト全事業の売上高は13%増の565億ドルだった。

 一方、AWSの売上高は、前年同期比12.3%増の230億6,000万ドル。2022年第3四半期に記録した27.5%増には劣るものの、堅調な成長を続けている。

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マイクロソフトが繰り出す策とは?
(Photo:Tada Images / Shutterstock.com)

マイクロソフトの生成AIを通じたクラウド利用促進の狙い

 生成AIがクラウド市場における成長ドライバーの1つであることは間違いないだろう。

 実際マイクロソフト、AWSともに最近開催した年次イベントでは生成AIにフォーカスした施策を次々と発表しており、自社のクラウド利用を促進する構えだ。

 マイクロソフトは2023年11月15~16日に開催した年次イベント「Ignite」の中で、自社開発のAIチップやオープンソースモデルの導入を発表した。これらは生成AI利用のボトルネックになっているコスト問題に切り込む施策であり、コスト減を通じて、Azureクラウドサービス上での生成AI利用を促す狙いがみてとれる。

 AIチップは「Maia」と「Cobalt」の2種類が発表された。このうち特に生成AIのトレーニングや推論向けに開発されたのがMaiaといわれている。

 こうしたAIチップは、生成AIアプリケーションのコアとなる大規模言語モデルの開発(トレーニング)と運用(推論)で必要になる。現在AIチップの最大供給者となっているのがNVIDIAではあるが、同社のAIチップは高パフォーマンスである一方で、非常に高価であり、供給不足も相まって、開発コストや運用コスト増の要因になっている。

 生成AIの高コスト問題に対応するために、マイクロソフトが取り組んできたのがAIチップの自社開発だ。

 今後、大規模言語モデルのトレーニングと推論ができるMaiaチップをAzureに採用することでOpenAIのように大規模言語モデルの自社開発・運用を狙う企業のAzure利用を促すことが可能となる。Maiaは2024年にAzureに実装される予定で、すでに第2世代の開発も始まっているという。 【次ページ】Azureの利用を促すChatGPT以外の「もう1つの施策」

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