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  • 2007/02/13

遠藤功 氏インタビュー:【特集「見える化の真意とは」】Part1 重要なのは、組織の問題解決能力を高めること

「見える化」という言葉が注目されるようになってから久しい。しかしながら「見える化」とは何か、具体的に何を「見える」ようにすればよいのか、といったどの企業に普遍的に当てはまる共通のビジョンは、まだまだクリアには見えてこない。実際、企業はどのように「見える化」に取り組めばよいのか。本特集は、Part1「見える化に重要なこと」、Part2「営業の見える化」、Part3「意識共有」の3回連載で「見える化の真意」について考察していく。


 本来の「見える化」とはいったいどういった経緯で生まれ、どのような目的のために実践されるべきなのか? かねてから“現場”の力にこだわり、『見える化~強い企業をつくる「見える」仕組み』や「2004年読者が選ぶベストブック」に選ばれた『現場力を鍛える~「強い現場」をつくる7つの条件』(いずれも東洋経済・刊)の著者でもある、早稲田大学大学院教授/ローランド・ベルガー会長 遠藤功氏に聞いた(遠藤氏講演「経営見える化実践セミナー」の受付はこちら)

「見える化」は単なる手段
「見えた」問題の解決が重要


【見える化】早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授 株式会社ローランド・ベルガー 会長遠藤功氏
早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授
株式会社ローランド・ベルガー 会長
遠藤功氏
 「見える化」というキーワードが盛んに言われるようになって久しいが、そもそも「見える化」とは何だろうか? 「見えるようにすること」、「問題点を明確化、かつ対象化すること」と言ってしまえば簡単だが、実際にその本質を正確に理解している経営者は決して多いとはいえない。小手先のIT ツールの売り文句に惑わされたり、かろうじて「見える化」のための施策を講じたとしてもその施策自体が目的になってしまったりしているケースもまま見受けられる。

 「見える化」という言葉が言われるようになった背景には、戦後長らく産業史上に君臨してきた「ものづくりニッポン」が今迎えている危機的状況があると、遠藤氏は言う。1980年代までのわが国は、製造業分野において他の追随を許さない高品質で世界の市場を席捲していた。その地位が、いま根本から揺らぎかけている。

 そうした危機感が「見える化」への要請となっているのだというのである。
「いま、ものづくりの現場でさまざまな問題が起こっています。品質管理や安全管理といった産業の根幹 の部分から、顧客のサービス満足度といったレベルにいたるまで、あらゆるフェーズにわたる問題です。ひとことで言って現場の品質が劣化しており、なおかつ企業によってその格差が拡大しているのです。これを何とかしなければという経営層・管理層の危機感や問題意識が、『見える化』というキーワードに反応した理由であるといえます。」

 遠藤氏は、関西電力御浜原子力発電所の蒸気噴出事故、管制指示違反や非常用脱出装置のセット忘れを 招いた日本航空グループの連続ミス、そして100 名余の犠牲者を出したJR 西日本の脱線事故などを例に挙げ、これらの事故の原因の根本には、かならずその予兆があったはずだと語る。その予兆が周囲に明確に察知されていたら、あの痛ましい事故は未然に防ぐことができただろう。そうした現場の予兆を明らかに示すこと、それが「見える化」の本質的な役割だというのである。

 「『見える化』を、あたかも何か特別な業務改善のキーワードのように思いなす人もいますが、『見える化』はあくまで問題が『見える』ことにつきるのです。重大な事故やミスが起きるときには、かならず何らかの予兆があるものです。それをいち早く見抜いて対処することが大事です。

しかしそれはさまざまな事象の陰に隠れていてなかなか見えない。それをいかに早く発見できるかが課題です。つまり『見える化』は問題を顕在化する方法論に過ぎず、重要なのはそこで発見された問題をいかに早期に解決するかなのです。」

 誰もが見えるようになってからでは事態はすでに手遅れであり、問題の火勢が拡がる前にいかに早く気づいて消し止めるかが重要なのである。そうした「見えた」ことを受けて肝心の問題のリカバリーに回ることの重要さに気づかず、ただ「見える」ようにすることにばかり腐心するのは、そもそも目的を見失っていると遠藤氏は指摘する。

【見える化】
(図)「見える化」には2種類がある
“自律の「見える化」”は、現場の見える化ともいうことができる。“自律の「見える化」”を
実現することなしに、“管理の「見える化」”だけを強調しても「見える化」は定着しない。
“自律の「見える化」”こそがオペレーションの基盤となる。


過剰な情報供給は
現場の混乱を招く
まずは「気づき」を与えること


 「見える化」の本来の目的は、トラブルや問題点の予兆を「見える」ようにすることだというのは理解できた。だが、その第一歩となる「見える」を実現すること自体、初めて「見える化」に取り組む身としては茫洋として見当がつかない。真に意味のある「見える化」には、何がもっとも重要なポイントとなるのだろうか。

 「『見たくなくとも見える』ことが、見える化には大事です。『見える』と『見る』には大きな差があります。『見る』は本人の意志がなければ、いくら情報が用意されていても見ません。そういう個々人の恣意的な行動に依存するのではなく、『イヤでも見えてしまう』状況を作り出すことが、問題をすべての人に知らしめ、すばやい解決への糸口を与えることに結びつくのです。」

遠藤氏は、トヨタ自動車のカンバン方式を、「見える化」の元祖であり、かつ「見える化」の本質が凝縮されていると、著書の中で指摘している。

 「アンドンとは、トヨタの各工場の製造ラインに吊り下げられている掲示板のことで、各工程や機械が稼働しているのか停止しているのかをランプで表示したものである。現場の管理者や監督者は工場のどこにいても、これを見れば現場の状況がわかるようになっている」(『見える化~強い企業をつくる「見える」仕組み』より)。
ここで大事なことは、アンドン方式では何か生産ラインにトラブルが生じると、まずアラームのランプが 点灯する点だという。

 「重要なのは、『気づかせること』なのです。現場のスタッフには個々人の経験や知識が蓄積されています。だから、何か問題があったと気づきさえすれば、それを解決するための自律的な行動に移ることができる。ところが多くの管理者は、アラームをつけたとたん、事態を詳細に伝えようとあわててありったけの情報を送ってしまうのです。それで現場はかえって訳が分からなくなってしまいます。」

 いま経営者層で注目を集めているバランスト・スコア・カード(BSC)のようなIT ツールも、そうした点を理解していないために、使い方を誤っている人が多いと遠藤氏は言う。
「こうした分析ツールは、すでにあるデータを把握するには有効です。しかし、肝心の“現場から現れている予兆”の発見にはなりません。今まさに現場で起こっている“問題の兆候”に気づくことが重要なのだと、忘れてはならないのです。」

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