- 会員限定
- 2024/08/23 掲載
SNS炎上で「フリーアナウンサー契約解除」は過剰反応?ビジネス視点で見る問題の本質
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。
複数の問題が入り混じっている
フリーアナウンサーをしている川口ゆり氏は2024年8月8日、自身のX(旧ツイッター)に、「ご事情あるなら本当にごめんなさいなんだけど、夏場の男性の匂いや不摂生してる方特有の体臭が苦手すぎる」「自身は、常に清潔な状態でいたいために1日数回シャワー、汗拭きシート、制汗剤においては一年中使う」「多くの男性がそれくらいであってほしい…」と記していたが、この投稿には批判が殺到した。ネット上で多かったのは、男性を誹謗中傷しているという見解である。その後、本人は謝罪を行い投稿もすべて削除したが、ネット上での批判は沈静化せず、最終的に所属事務所が契約を解除。さらには講師として提携していたビジネス研修を手掛ける企業も、同様に契約解除を発表した。一連の出来事に対して、当然という意見がある一方、契約解除は行き過ぎではないかという意見も複数の著名人から出される状況となった。
この度は私の不用意な発言で不快にさせ、傷つけてしまった方が多くいたこと、大変反省しております。言葉を扱う仕事をしている者として未熟でした。
— 川口 ゆり yuri kawaguchi (@funifuniyuri) August 11, 2024
以後、言葉で誰かを傷つけてしまうことがないように精進してまいります。
本当に申し訳ございませんでした。
今回の件は複数の問題が絡み合っており、議論する際には問題を整理して考える必要がある。特にビジネス的な議論を行う場合には、発言が不適切かだけが論点ではなくなるので注意が必要だ。
川口氏の契約解除については漫画家の倉田真由美氏が「匂いってデリケートな問題だからやや配慮を欠いた発言ではあるが、特定の個人を指したわけでもないのに解雇ってちょっと過剰反応すぎないか」と対応を疑問視。「普通の会社なら、これで社員を首にすることは不可能だと思うが」と意見を述べた。これは「契約解除は行き過ぎ」という立場の標準的な見解と言えるだろう。
今回のSNSでの発言が誰かの名誉を棄損しているのかという点について言えば、倉田氏が指摘している通り、特定の個人を指したわけではなく、男性一般ということになるので、基本的に法的な対象にならない。そうであるならば、契約解除は過剰反応ではないかという理屈も一定の合理性を持つように思える。
だが、この点についても解釈は分かれる可能性が高い。それは川口氏がフリーアナウンサーという立場だったからである。 【次ページ】労働者なのか事業主なのか
キャリア形成のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR