- 2025/12/28 掲載
「学歴なんて関係ない」と言いながら…依存している人が気づかない「学習歴」の重要性
ユナイテッド・パートナーズ会計事務所パートナー・税理士/経済学修士/商学修士/MBA(豪州)。慶應義塾大学会計大学院修了。アーサー・アンダーセン等を経て、2003年現会計事務所創業に参画。プライベートエクイティファンドや産業再生機構の100社を超える大企業投資先の再生案件に従事。PEファンド運営会社やM&A買収企業に対し、会計・税務のインフラ構築から税務調査対応までワンストップで支援してきた。また、PEファンド経営陣や創業家ファミリーなど、数多くの富裕層に対する資産管理会社の設立・運営、相続・所得税対策に携わり、実務経験は30年に及ぶ。近年は「お金の使い方=生き方」という視点から、ファイナンシャル・ウェルビーイング(経済的な安定と心身の充実を両立する新しいお金の哲学)を提唱。富裕層実務で培った知見をもとに、中間層から超富裕層まで幅広い層に向けて「見えない自分資産」を育てるヒントを発信している。著書に『世帯年収1000万円超の人が知っておきたいお金のルール』(あさ出版)、『儲けのしくみがわかる!決算書の読み方』(三笠書房)、『幸せへのマネーバイブル 新・女性のライフステージ別ガイドブック』(中央経済社)などがある。
学び続けるのに「最も手軽」な方法とは
むしろ、「学び続けられる自分でいること」に価値を置いています。
学び続けるなら、「仕事の中で学ぶ」のが最も手軽な方法ではないかと思います。
労働基準法では1日最大8時間の時間を過ごします。その時間が刺激的で好奇心に満ちた環境であれば最高ではないでしょうか。仕事の中に学びの材料を見つけることで、学びが生活の中に自然と溶け込んでいきます。
仕事を通じて学ぶことの魅力は、感情が動く瞬間があること、そして学びを実践できることです。さらに、そこには金銭的な報酬や利害が絡むため、机上の学び以上に真剣さや切実さが伴います。成果が評価や収入に直結するからこそ、学びは単なる知識にとどまらず、実力や経験として自分の中に深く刻まれていくのです。
たとえば、思うようにできずに悔しいと感じたり、もっと補強したいと意欲が湧いたり、そうした感情が起点になって、私たちは自然と学びのモードに入っていきます。しかも、その学びを実践し、行動に移すことができれば、「経験」という財産が積み上がっていきます。
そして、経験が成果につながれば、金銭的な対価(外的報酬)も得られます。つまり、感情→行動→成果→報酬という流れが日常の中で回っているのです。これは、座学だけでは得にくい、生きた学びのサイクルとも言えます。
また同時に、学びの姿勢は、内的報酬にもつながっています。「成長している」という実感。「できた」「わかってきた」という達成感。そうした感覚が、仕事や学びから得られるでしょう。心の内側で感じる報酬にもつながり、自己効力感や幸福感をゆるやかに育ててくれるのです。
結果として、学びの姿勢が、知識やスキルの獲得を超えて、人間としての深みや柔軟性を育てているように感じます。そして、こうした姿勢を持ち続けることが、やがて信頼や機会を引き寄せる力となり、長い目で見れば、仕事や人生の選択肢を広げてくれるのです。
最近、社会に出た後も必要に応じて学び直す、「リカレント教育」や「リスキリング」という言葉をよく耳にします。
しかし、2018年の厚生労働省の資料によると、社会人になってから何かを学んだ経験がある人は約20%にすぎません。さらに、2022年の文部科学省のデータでは、日本の修士号取得者数は、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、韓国の平均と比較して約1/6にとどまり、人文・社会科学分野の割合も非常に低いことが示されています。また、日本は高度外国人材にとって選ばれにくい国になっているとの指摘もあります。
OECDの「Dashboard on priorities for adult learning」や「Future-Ready Adult Learning Systems」(2019年)によれば、日本では大学や大学院の正規課程で学ぶ社会人の割合が非常に低いです。
一方で、YouTubeやインフルエンサーから手軽に知識を得ようとするビジネスパーソンの需要は増加しています。忙しいからこそ、じっくりと学ぶ時間がなく、ファストファッションならぬ「ファスト教養」に頼ることが増えているのかもしれません。
幸せなお金持ちの共通点は、知識をたくさん詰め込むことではなく、視点を増やし、判断の感度を高め、人生の選択を広げることです。学び直しは、支出するお金の大小にかかわらず、地域活動、子育て、人との会話、ニュース視聴など、日常の経験から感度を高めることができます。一番大切なのは、仕事を続けながら、継続的に学ぶことです。 【次ページ】「この人のようになりたい」と思える人はいるか
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