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  • 2008/07/18 掲載

次世代ワイヤレス技術 WiMAXとは

NETWORK Guide 2006 SUMMERより加筆・修正

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無線電信が実用化されたのは、さかのぼること100年と少しの昔。19世紀末にヨーロッパでマルコーニが発明した無線電信機が最初である。それ以降の無線通信技術はすさまじい速度で進化を遂げた。とくにこの10年間は、高度な無線通信技術が、誰にでも使えるパーソナルな形で提供されるに至った。携帯電話やPHS、無線LANなどは、われわれのコミュニケーションを豊かなものにし、文化や社会まで変える力を持っている。そうやって大きな変化をもたらした無線通信技術がいま、もう一段階の進化を遂げようとしている。その急先鋒たる次世代ワイヤレス技術WiMAXについて、大水祐一氏が解説する。

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WiMAXはコンピューティング系の無線技術

 WiMAX(ワイマックス)とは、Worldwide Interoperability for Microwave Accessを縮めた呼称であり、無線通信技術の一規格である。本稿ではこのWiMAXについて紹介するわけだが、本題に入る前にまず、さまざまな無線通信技術におけるWiMAXの占める位置づけを述べておこう。

 パーソナル向けの無線通信技術は、コンピューティング系と携帯電話系に大別される(図1)。この2つは前者がメーカーによる開発や提供主導であるのに対して、後者は通信事業者主導という違いがある。また標準化の舞台も、前者が民間団体であるIEEE(電気電子技術者協会)であるのに対し、後者は国連の専門機関であるITU(国際電気通信連合)で行われてきた。WiMAXは、このうち前者を出自とする技術である。

図1 無線通信技術の開発の流れ
図1 無線通信技術の開発の流れ
IEEE:電気電子技術者協会 ITU:国際電気通信連合 LAN:Local Area Network
MAN:Metropolitan Area Network PAN:Personal Area Network


 前者のコンピューティング系の無線通信技術は、適用される通信の範囲によって、大きく3つに大別される。PAN、LAN、MANである(図2)。

 PANとは、Personal Area Networkの略だ。半径10m程度の距離の通信を指し、機器同士の直接通信などに使われる。PCの入出力インタフェースを無線化するIrDA(赤外線通信)やBluetooth、UWB(Ultra Wide Band : 超広帯域無線)などがこれに当たり、BluetoothはIEEE802.15で標準化されている。

 LANとは、ご存知のとおりLocal Area Network、構内通信網のことだ。距離としてはおおむね100m~1km以内となる。IEEE802.11で標準化されており、別名Wi-Fi(ワイファイ)と呼ばれる。

 MANとは、Metropolitan Area Network。1つの都市の範囲を対象としたネットワークで、半径数km程度をエリアとする。WiMAXはこれにあたり、標準化としてはIEEE802.16で取り組まれている。

 さらにこれらの距離以上の通信形態はWAN(Wide Area Network)、すなわち広域通信網ということになるのだが、コンピューティング系の無線通信技術ではここを対象としたものはなく、携帯電話系の3G、3.5G、GPRSといったサービスが該当することになる。

図2 無線通信技術の適用範囲
図2 無線通信技術の適用範囲


次世代モバイルは複数方式の融合に?

 以下のように、開発・提供主体の流れを踏まえてコンピューティング系と携帯電話系と分けたのだが、実際にはこの2つは融合していく傾向にある。

 たとえば現在でも、3G携帯電話と無線LAN(Wi-Fi)を一体化した端末はNTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクなどから提供されている。今後WiMAXが登場すれば、あるエリアでは携帯電話方式による3Gで、あるエリアではWiMAXや無線LANでと、複数方式に対応した端末が開発されるかもしれない。

 つまりお互いの通信技術は排他的な関係にあるものではなく、それぞれを補完しながら利用していく形になる可能性が高い。ユーザーにとっては選択肢が増え、場所に応じた最適な手段を使い分けることができる。

 これは通信事業者にとってもメリットがある。多くの利用者が自社の携帯電話サービスを利用する状況が理想なのだが、現実にはPC向けの定額データ通信など提供が難しいものがある。1つの技術でユーザーのすべてのニーズに応えるのは現実的ではないわけだ。このようなときには、WiMAXのような無線通信技術をセット提供することによって、ユーザーの満足度を上げることができる。

 さて、WiMAXの提供と重なるかのように、いくつかの次世代無線通信技術の姿が明らかになってきた。現行名乗り出ている主要な次世代技術には、WiMAXのほか、iBurst、次世代PHSがある(表1)。

表1 次世代無線ブロードバンド技術の方式
表1 次世代無線ブロードバンド技術の方式
※2006年3月時点


 こうした次世代無線通信技術がにわかに活気づいているのには理由がある。総務省が周波数再編方針にもとづき無線ブロードバンドの導入について検討を実施したからだ。具体的には2005年12月に公表された「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」の最終報告書で、2.5GHz帯(2.535~2.605GHz)を新方式の無線ブロードバンドに割り当てるとの方針を示している。

 近い将来割り当てられると予想される新たな周波数が示されたことで、それまで各事業者のアイデアでしかなかったサービスイメージが、格段に現実味を増してきたのである。前置きがいささか長くなってしまったが、次ページではWiMAXの具体像について入っていこう。

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