• 2025/06/24 掲載

クロスSWOT分析とは何か?事業戦略に活用できる実践的フレームワークを解説(2/3)

連載:事例や図版でフレームワーク解説

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クロスSWOT分析の構造

 クロスSWOT分析は、「強み・弱み・機会・脅威」の4つの要素をマトリックス構造で組み合わせ、それぞれに適した戦略を導き出すフレームワークです。

 この構造は、先にも示した以下の図の通りです。

クロスSWOT分析のマトリックス図:
  機会(Opportunities) 脅威(Threats)
強み(S) SO戦略 ST戦略
弱み(W) WO戦略 WT戦略

 それぞれのマス(SO、ST、WO、WT)が、異なる戦略タイプを示しており、戦略立案の方向性を明確にします。

4つの戦略タイプ:SO・ST・WO・WT戦略の基本
 クロスSWOT分析では、4つの組み合わせから以下のような戦略タイプが導き出されます。

    ■ 戦略タイプの定義と目的
  • SO(Strengths × Opportunities)戦略
  •  自社の強みを最大限に活用して、市場や外部の新たな機会を積極的に獲得し成長を目指す戦略。

  • ST(Strengths × Threats)戦略
  •  自社の強みを活かして、外部の脅威に対して防御的、または回避的に立ち回る戦略。

  • WO(Weaknesses × Opportunities)戦略
  •  自社の弱みを外部の機会と組み合わせることで、弱点を補強しながら成長のチャンスをつかむ戦略。

  • WT(Weaknesses × Threats)戦略
  •  弱みと脅威が重なる場合、リスク回避や損失最小化のための守りの戦略を取る。

戦略タイプ別の典型例
戦略タイプ 目的・方針 具体的な戦略例
SO戦略 強みで機会を活かす 新市場向け新製品投入、技術力を生かした新規事業展開
ST戦略 強みで脅威を回避 ブランド力で新規参入者を牽制、品質管理強化
WO戦略 弱みを補い機会を狙う 人材育成で組織力強化し新規市場参入、M&Aによる弱点補完
WT戦略 弱みと脅威の回避・縮小 事業撤退・リストラ、コスト削減・リスク回避策の実施

 このように、領域ごとに異なるアプローチで戦略を組み立てるのが、クロスSWOT分析のポイントです。

各領域の意味と戦略立案ポイント
 それぞれの領域でどのような点に留意し戦略を立案するべきか、具体的に解説します。

  • SO戦略のポイント
  •  自社の強みと外部機会の最適なマッチングが求められます。たとえば、IT企業がAI技術(強み)を活かし、DX需要拡大(機会)に合わせて新サービスを開発する例などです。
  • ST戦略のポイント
  •  脅威に対して自社の得意分野でどう立ち向かうかが重要です。たとえば、競争激化(脅威)に対し、ブランド力(強み)を強化するマーケティング戦略などがあります。
  • WO戦略のポイント
  •  自社の弱みを克服しつつ、市場の好機を逃さない工夫が必要です。たとえば、人材不足(弱み)を外部提携や採用強化で解決し、海外進出(機会)に挑戦するなど。
  • WT戦略のポイント
  •  守りを固め、最悪のケースに備える戦略です。事業撤退やコスト削減、リスク管理体制の強化がこれにあたります。

    業界別の戦略例
  • 小売業のST戦略:EC市場の競争激化(脅威)に対して、リアル店舗の顧客体験強化(強み)で差別化
  • 製造業のWO戦略:技術人材不足(弱み)を、海外技術者の採用(機会)で補完
  • サービス業のWT戦略:価格競争(脅威)とコスト高(弱み)の組み合わせで、不採算店舗の閉鎖

 このように、業界ごとに最適な戦略を導き出せる点がクロスSWOT分析の魅力です。

クロスSWOT分析の実践方法&コツ

 クロスSWOT分析を実践する際は、いくつかの明確なステップに沿って進めていくと効果的です。全体プロセスは下記のようになります。

    クロスSWOT分析 実践フロー図
  • 目的設定・情報収集
  • SWOT要素の洗い出し
  • クロス分析(マトリックスへの落とし込み)
  • 優先順位付け・実行計画の立案

 それぞれのステップで重要なポイントやコツがありますので、順に詳しく解説していきます。

ステップ1:目的設定と情報収集
 まず最初に、分析の「目的」を明確に設定することが肝要です。たとえば、「新規事業立案のため」「既存サービスの競争力強化のため」など、目的を具体的に定めることで、以降の作業がブレなくなります。

情報収集のコツと実例
 SWOT要素の洗い出しには、できるだけ多様な情報源を活用することが重要です。主な情報源は以下の通りです。

  • 社内データ(業績、顧客満足度調査、従業員アンケートなど)
  • 市場調査レポート
  • 業界ニュースや競合他社の公開情報
  • 顧客インタビューや口コミ

 たとえば、飲食チェーンが新メニュー開発のためクロスSWOT分析を行う場合、顧客アンケートやSNSの声、売上データなどを総合的に集めることが重要です。

ステップ2:SWOT要素の洗い出し
 次に、集めた情報をもとに、自社の「強み(S)」「弱み(W)」「機会(O)」「脅威(T)」を整理します。

    要素抽出のポイント
  • 強み(S):他社と比べて優れている点、独自のリソースや技術
  • 弱み(W):改善の余地がある点、競合に劣る部分
  • 機会(O):新たな市場ニーズ、制度変更、社会的トレンド
  • 脅威(T):競争の激化、法規制、景気悪化

 バイアスを排除するには、複数部門や外部の意見も取り入れ、多角的な視点で項目を抽出することが重要です。たとえば、単一部門だけで強み・弱みを議論すると主観が入るため、第三者的な評価も参考にすると良いでしょう。

ステップ3:4領域でのクロス分析
 SWOT要素が整理できたら、いよいよマトリックスに落とし込み、クロス分析を進めていきます。

    クロス分析の進め方(例)
  • 縦軸に「強み/弱み」、横軸に「機会/脅威」を設定したワークシートを用意する
  • 各領域に当てはまる具体的な戦略案を記入していく
  • チームで意見を出し合い、戦略オプションを広げていく
ワークシートサンプル
  機会(O)例 脅威(T)例
強み(S)例 新規市場開拓で強み発揮(SO) ブランド強化で競合排除(ST)
弱み(W)例 外部提携で弱み補完(WO) コスト削減でリスク最小化(WT)

 このようなシートを活用して、戦略案を可視化することがポイントです。

ステップ4:優先順位付けと実行計画の立案  クロス分析で複数の戦略案が生まれたら、現実的なリソースやインパクト、実現性を踏まえて優先順位をつけていきます。

    優先順位付けの基準と実行計画
  • インパクトの大きさ
  • 実現可能性(リソースや予算、社内の体制)
  • 緊急度・市場環境の変化スピード

 優先度の高い戦略から順に、具体的なアクションプランやKPI(重要業績評価指標)を設定し、実行計画に落とし込んでいきます。

例)「SO戦略で新規サービスを立ち上げる」場合 KPI=3か月以内にβ版リリース、半年後に1000ユーザー獲得、など
【次ページ】クロスSWOT分析のメリット
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