• 2008/10/07 掲載

世界的な金融危機の中、中小企業を支える地方金融は大丈夫か?「金融機能強化法」の整備を進めるべき

連載『ふじすえ健三のビジネス+IT潮流』 

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10月3日に採決されたアメリカ連邦議会による金融安定化法案。だが、その後、NYダウは下落し、日経平均株価も1万円割れとなった。この事態は日本経済にどのような影響をおよぼすか。特に、中小企業を支える地方の金融機関は大丈夫なのか?当サイトで連載中の民主党参議院議員ふじすえ健三氏に話を聞いた。

アイアンふじすえ

アイアンふじすえ

藤末健三(フジスエケンゾウ)
民主党参議院議員
元総務副大臣 元参議院総務委員長

まだまだ広がる世界的な金融危機

 アメリカ連邦議会は、10月3日、「金融安定化法案」を採決しました。
この法案により最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金を投入し、金融機関から不良資産を買い取る制度が整備されたことで金融市場が大混乱に陥るという事態は回避されました。

しかしながら、これでも金融危機は終わらないという見方がほとんどです。FRB(連邦準備制度)のバーナンキ理事長も全力で引き続き取り組みを続けると発言しています。

戦後最大の危機

 昨年から始まったサブプライムローン問題。ちょうど昨年のお盆にアメリカの経済が動揺し始めたことを今でも覚えています。

 それが大きな危機として表に姿を見せたのは、やはりアメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズが9月15日に連邦破産法11条の適用を申請し、実質的に破綻してからです。この破綻から金融安定化法の成立まで3週間もかかってしまいました。

 先日、アメリカ駐在の政府高官の話を聞いたのですが、「大統領選挙中だから、有権者に不人気な高給取りの会社の救済はできなかった」とのこと。タイミングの悪さを思いました。

リーマン・ブラザーズの負債総額は6130億ドル(約64兆3600億円)で米史上最大といわれています。日本法人のリーマン・ブラザーズ証券も同月16日には地裁に民事再生法の適用を申請し、負債総額は3兆4000億円となっています。これは、2000年に経営破綻した協栄生命保険(現ジブラルタ生命)の約4兆5000億円に次ぎ戦後2番目の大規模倒産です。

日本の銀行は大丈夫か?

 しかしながら、これで話は終わりません。9月16日時点でわが国の主要銀行10行のリーマン・ブラザーズ向けの債権は、合計約3200億円、そのうち保全されていない部分は約1400億円です。

ふじすえ健三氏
出典:金融庁

 債権が多い銀行を見ると、みずほFGが債権400億円、うち保全されていない部分が200億円、三菱東京UFJ銀行は債権273億円、うち保全されない分が231億円となっています。この件に関して、金融庁は大きな問題にはならないと発言しています。確かに公表データだけ見ると大手銀行にとってはその影響は軽微なものなのかもしれません。しかし、地方金融には大きな問題になるのではと危惧するのです。

地方の中小企業を支える地方銀行はどうなる?

 9月16日時点で地方銀行の債権は、30行しか公開されていません。それらをみても、リーマン・ブラザーズ関係債務の総額はなんと約610億円にもなるのです。

1行平均20億円。地方銀行と言われるものは全部で110行・社ですので、単純推定で「2200億円」となります。これに300弱ある信用金庫などを加えると、リーマン・ブラザーズ破綻の影響は相当大きなものとなるでしょう。しかもこれらの公表額は、直接リーマン・ブラザーズが関係している債券だけです。孫受け、ひ孫受けでリーマン・ブラザーズが関与している債務は分かっていないのです。

 先日知人から「地方銀行は独自な運用力がないため外国金融機関の債権を多く保有している」と聞いていたので、「地方金融機関は大丈夫ですか」と金融庁に直接聞いてみました。そのときは金融庁の幹部から「問題ない」との返事をもらったのですが、情報も十分に公開されぬ中で、どこまでこの言葉を信じていいのでしょうか。

議員立法で金融機能強化法の復活を

 疑念が拭えない私が金融庁に指摘したのは、「金融機能強化法」を使えるようすべきということです。 金融機能強化法は、地域の金融機関(地方銀行、第2地方銀行、信用金庫、信用組合など)に対して健全行にも予防的に政府による資本増強するための法律です。
2004年8月に成立して現在でも法律としては存在しますが、資本注入の申請期限が今年3月で終了しており、実態としては使えなくなっているのです。

   私は、地域の金融機関がリーマン・ブラザーズ破綻の影響を受け万が一倒産することがないように、本法を再度使えるようにすること(再度立法が必要)を主張しています。地方の銀行が倒産したとき、その影響は必ず地元の中小企業に及ぶからです。

 「大本営」の金融庁は、私の質問に「そのような法律は必要ない」と公言しています。そして、「地方金融機関のリーマン・ブラザーズ関連の債権は自主公表に任す」と言っています。ある意味、情報隠蔽では?と思いました。

 しかし、本法の必要性を訴えている議員は、私だけでなく与党自民党内にもいます。何とか超党派でこの法律を成立させたいと、今動き始めているところです。民主党からは緊急経済対策に金融機能強化法の復活を出します!
是非、与党からも同じ提案をしていただきたいものです。地方の中小企業の経営安定化のためにも!!

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