- 2026/07/30 15:36 掲載
研究者の職は奪われない?最先端AIに6日間任せた論文2本、評価は「最低レベル」に
今回の研究は、プリンストン大学のアービンド・ナラヤナン教授らが立ち上げたAI評価プロジェクト「CRUX」の一環。CRUXは、短いベンチマークでは捉えにくいAIの実力を測るため、数日から数週間に及ぶ現実的で自由度の高い課題をAIに実行させる。プリンストン大学は5月、AI研究開発やガバナンスを対象に、1~2カ月ごとに新たな評価を公開する計画を紹介していた。
今回の発表の対象は、LLMの人格特性の構造と制御、表形式基盤モデルで予測精度を損なう分布変化の検出という2課題。主要実験ではClaude Opus 4.8をOpenClaw上で動かし、各課題に最長6日、3,000ドル(約49万円)、GPU予算、AWSの仮想マシン、Webアクセスを与えた。AIは文献調査、コード作成、実験、外部AI査読、論文執筆まで進めた。
しかし、元論文の著者がトップAI学会の基準で採点すると、人格特性の論文は6段階で下から2番目となる2の「Reject」、分布変化の論文は最低となる1の「Strong Reject」だった。データや実験の選び方に根拠が乏しく、限られた結果から広い結論を導いたほか、文章も要点が見えにくいと評価された。
一方、数百GPU時間の実験を動かし、先行研究を調べ、再現用コードを用意した点は評価された。研究に必要なエンジニアリング作業を広くこなす力は示した形だ。
研究チームは失敗を5つに整理した。採択水準を見極める判断不足、研究設計への創造的な修正不足、行き詰まりからの抜本的な後戻り不足、時間・予算への認識不足、長期作業で指示から外れる「指示ドリフト」だ。
AI自身の査読は計15回にわたり一度も採択判定を出さなかったが、AIは研究方針を捨てて最初からやり直さず、主張を弱めたり注意書きを増やしたりする対応に傾いたという。
両実験はAPI予算の半分以上を残し、完成論文は指定ページ数も超えた。別のモデルと実行基盤を使う検証でも同様の失敗が再現され、GPT-5.6 Sol UltraをCodexで動かした実験は、逆に3,000ドルの予算を2日余りで使い切った。AIは資源を残しすぎても、使いすぎても研究計画を立て直せなかった格好だ。
ただし、評価対象は2課題、主要実験も2回に限られる。元論文の著者がAI論文を採点する非盲検評価で、OpenClawの不具合による文脈消失も起きた。研究チーム自身も結果を「初期的な証拠」と位置付け、より多くの課題と新しいモデルで追試する方針だ。
研究チームは、現時点のAIは研究の実装作業を担える一方、問いの立て直しや証拠の十分性を判断する重要工程に弱さが残ると結論。企業の研究開発でも、AIは独立した研究責任者というより、人間の監督下で探索速度を高める研究エンジニアとして使う段階にあることを示す結果となった。
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