- 2026/09/14 12:00 掲載
数学フィールズ賞受賞者25人が「数学難問解決を巡るAI競争」に警鐘
人間同士の解決による知的伝承プロセスを寸断する恐れ
この声明の契機となったのは、米オープンAIが同月8日に行った発表である。同社は多数のAIを並列稼働させ、ミレニアム懸賞問題の一つである「ナビエ・ストークス方程式の解の存在と滑らかさ」に関する解法を発見したと報告した。だが、発表の直前にニューヨーク大学や米アンソロピックの研究者らが関連する方程式の研究成果を公表していた。
そのため、オープンAIの発表が先行研究に対する適切な引用を欠いている点や、AIの学習データからアイデアが流出した可能性が指摘され、数学界から大きな反発を招いていた。
声明のなかで受賞者らは、AI企業が自社モデルの推論能力を示す指標として数学の難問を利用する姿勢を厳しく批判している。学術界において問題を解くことは、概念的な理解と新たな洞察を獲得するための手段にすぎない。企業間の競争によって解答のみが迅速かつ大量に生産される現状は、人間同士の議論や教科書への体系化、次世代への教育を通じて発展してきた数学特有の知的伝承プロセスを寸断する恐れがある。
さらに、査読を経ず、先行研究への敬意を欠いたまま商業的な広報目的で成果が速報されることに対して、研究倫理上の重大な懸念を表明した。こうした数学界とAI企業の摩擦は突発的なものではなく、同年6月にもAIの能力誇張や企業の研究介入に警告を発する「ライデン宣言」が国際的な数学者グループによって発表されている。
今回の共同声明は、AI技術の数学への応用そのものを排除しようとするものではない。AIが適切に用いられれば探求を助ける可能性を認めたうえで、解答を出すという手段が目的にすり替わる現状に警鐘を鳴らしている。学問の健全性を維持するため、開発企業や社会全体に対して緊急の対話を求めている。
AI・生成AIのおすすめコンテンツ
AI・生成AIの関連コンテンツ
PR
PR
PR