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  • 2026/10/14 06:10 掲載

なぜガンダムは苦戦?作者・河森正治が明かす…マクロスが米国で人気獲得できたワケ

河森正治氏のインタビューシリーズ(第4回)

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『超時空要塞マクロス』をはじめ、『マクロスプラス』『マクロス7』『地球少女アルジュナ』『創聖のアクエリオン』──時代を彩った名作は、なぜ次々と生まれたのか。海外での成功も、その後のヒットの連続も、決して偶然ではない。その背景には、河森正治氏が若き日の成功の後に経験したスランプと、自らの価値観を何度も壊しながら築き上げた創作哲学があった。作品ごとの設定や世界観に込めた狙いを聞きながら、ヒットメーカーの思考の変遷と、名作を生み出し続けた理由をひも解く。
聞き手・執筆:エンタメ社会学者 中山 淳雄

エンタメ社会学者 中山 淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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全米No.1になった『マクロス』、その"生みの親"を救った意外な原作とは

ガンダム通用せずでも…マクロスは米国人気あった理由

――河森さんが原作・メカデザインを手がけた『超時空要塞マクロス』は、海外展開時に『超時空騎団サザンクロス』『機甲創世記モスピーダ』という他の2作品と合わせて再編集され、『ロボテック』(注1)という1つのシリーズとして1985年に米国で大ヒットしました。ご自身の作品が形を変えてヒットしたことを当時どう受け止めていましたか?

河森氏:そうですね、あれは自分たちが作った意図とは関係なく、全然違う作品と合わせて再構成されてたりもしましたし、私も事前には全然見せてもらえずじまいでした。

 ただ『ロボテック』は海外でとてもよく見られていましたね。たとえば、インスピレーションハンティングで米国を旅してまわって空軍基地にも行ったりしたのですが、その際、僕がマクロス原作者の1人だと知ると、空軍基地の軍人さんから「デ・カルチャー!?」といったように声をかけられたりもしました(笑)。

注1:ロボテック:タツノコプロが米国展開に関わった、『超時空要塞マクロス』『超時空騎団サザンクロス』『機甲創世記モスピーダ』の3作品を組み合わせた85話からなるシリーズ。「ロボテック」は、この3作品に共通する変形ロボット技術の総称。米国代理店ハーモニー・ゴールド社が『マクロス』を持ち込んだが、36話しかないことに米国テレビ局が難色を示したため、この形式になった。結果的に人気を博したのは『マクロス』部分が中心で、恋愛の三角関係に米国人も熱狂したという。

――当時、『スター・ウォーズ』で米国もSFブームが巻き起こっており、そこで安いSFアニメの供給元として日本アニメがどんどん輸出されていましたよね。同じく人気ロボットアニメの『機動戦士ガンダム』も、海外で人気だったのでしょうか?

河森氏:ロボット同士がプロレスのように戦闘しているのって、「ごっこ感」が強いのかもしれません。特に、戦争を続けて兵器が身近にある米国の視聴者にとってはそう感じるのだと思います。そのため、“実在する戦闘機から”人型に変形する『マクロス』のほうが先に受け入れられた、と聞いたことがあります。

 そうしたこともあり、実は、ガンダムは最初、米国市場ではあまり受けなかったんですよ。当時のアメリカの人たちには、歴然とした「人型ロボットアレルギー」があったようなんです。
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 理由はいくつかあって、1つは兵器としてのリアリティです。戦争や兵器に普段から慣れている当事国のアメリカのユーザーにとっては、巨大な人型ロボットが立ち上がったら「ただの“的(まと)”になって実戦にならない」「役にも立たない」という印象だったと思います。

 もう1つは心象的・宗教的な理由で、向こうでは「巨人は異生な存在」であり、「神に近づいてはいけない」という感覚があるらしいんです。さらに、当時の海外ではロボットの「顔」もネックでした。顔のあるロボットのコックピットに操縦者が乗っていると、「1つの体にアイデンティティ(魂)が2つある」ように感じられ、それがどうも許容されなかったようなんです。

 だから、実在の戦闘機から人型に変形する『マクロス』や、実在の車から変形する『トランスフォーマー』(こちらは機械生命体という設定ですが)の方が、「そういう機能があるなら」という言い訳(エクスキューズ)が立ちやすかった。そうした変形ギミックが突破口となって、徐々に人型ロボットが受け入れられていったと聞いています。

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河森正治(かわもり・しょうじ)

ビジョンクリエイター/メカニックデザイナー/アニメ監督・原作者。1960年、富山県生まれ。慶應義塾大学理工学部中退。『超時空要塞マクロス』(1982年)の原作(共同)・メカデザインを手がけ、劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(1984年)で監督デビュー。以降『マクロスプラス』『マクロス7』『地球少女アルジュナ』『創聖のアクエリオン』などを手がける。VF-1バルキリーに代表される「完全変形」メカデザインの第一人者。2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務め、シグネチャーパビリオン『いのちめぐる冒険』をプロデュースした。ベクタービジョン所属。アニメツーリズム協会会長。
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なぜマクロス「ハリウッド実写化」は頓挫した?その裏側

――ただ、これだけ米国で人気だったマクロスですが、その後、日本で作られた『マクロス7』や『マクロスF』といった正統な続編が、「日本発のオリジナル作品(マクロスブランド)」としてそのまま海外展開できない事態に陥ってしまったことが悔やまれますね。海外では米国版の『ロボテック』の権利が優先され、日本側のシリーズ展開が阻害されてしまった、いわゆる著作権問題(注2)ですね。実はハリウッドでの実写映画化のお話もあったんですよね?

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